ウェアラブル生体センサで計測される実世界データを活用した医療・健康管理の実現

※ページ下に、公開講座での質問の回答を掲載しました。

概要

小型・軽量のウェアラブル生体センサを用いれば、従来は計測が困難であった日常活動中の生体情報を、連続的かつ容易に計測できるようになる。そのような生体情報については、遠隔医療診断や日常の健康管理への応用が期待されている。本講座では、ウェアラブル生体センサを用いた実世界データ科学の基礎論として心拍変動解析などを含む生体信号解析,医療・生物統計学について解説し、応用事例として職場でのミスや事故発生のリスク低減といった労働安全衛生における活用を紹介する。

開催要項

日 時 2日間全4コマの講義となります
2021年8月10日(火) 13:00~16:15
2021年8月11日(水) 13:00~16:15
2日間とも、講義80分程度+質疑応答10分程度×2コマ
会 場・定 員 Zoomを使ったオンライン開催・定員200名(予定)
講 師 清野 健 教授(大阪大学大学院 基礎工学研究科)
オーガナイザー 三分一 史和 准教授(統計数理研究所)
参加申込 本講座の申込受付は、Peatix Japan(株)のシステム上で行います。下記リンクをクリックすると同社のサイトに移動します。お申込のためにはPeatix Japan(株)のシステムにアカウントの登録が必要です。

Peatixでの募集締切:2021年8月4日(水)23:00まで(お申し込みは こちら からです)。
※定員に達し次第、お申込を締め切らせていただきます。

※取得した情報は、当該講座への登録及び受講に関する連絡や、企業や個人を特定できない形で弊所講座・教材等の企画立案等のために利用することがあります。Peatix Japan(株)のシステムにアカウントを作成する際に入力する情報については同社のポリシーに従うものとします。

参考書

・中江 悟司, 金子 美樹, 清野 健:ウェアラブル生体センサを活用した暑熱労働環境の評価と改善,計測と制御 58,96-101 (2019).
・中江 悟司, 金子 美樹, 清野 健:スマート衣服を活用した職場環境のウェルネス管理,繊維機械学会誌 せんい 72, 445-452 (2019).

アンケート時の質問への回答および参考文献

1. 質問への回答

質問1 加速度計の解析に関してはR以外の統計ソフトでも可能でしょうか?
回答;統計専用ソフトというわけではありませんが,Python, MATLAB,Mathematicaなどでも解析可能です.私は時系列解析に,SAS, SPSSなどの統計ソフトを使ったことがありませんので,これらのソフトについてはわかりません.
質問2 予測心拍数を用いた体調変化の検出を研究された際に個人の特徴を学習し、普段の体調との違いを判定されていらっしゃいますが、普段の体調をどのように定義されましたか。
回答;主観的体調感のアンケートを併用し,本人が体調に問題がないと回答した日のデータを学習に用いる方法などが考えられます.また,予測モデルを事前に学習済みのものを使い続けるのではなく,毎日データが追加されるごとに更新することで,予測のばらつきの範囲も予測できるようにできます.学習方法など,いろいろな工夫が考えられると思います.
質問3 個人情報の観点から、例えば歩行に関するデータは個人が特定できるものとして扱われるとお伺いしたことがあります。今後、加速度計や心拍計などから得られるデータからわかること・また取得できる情報量が多くになるにつれて、個人情報の観点で課題などは考えられますでしょうか。
回答;個人情報保護の観点から,どのような生体データであっても,利用者に事前にデータの使用目的を説明し,使用の同意をえること,また,目的外の使用が無いようにする必要があると思います.
質問4 データが得られた後の、統計解析方法についてもお聞きしたかったです。時系列解析の方法を用いるのでしょうか?
回答;時系列解析の方法は,時系列を特徴づけるために用います.時系列の特徴量を抽出した後は,機械学習や統計の方法が必要になってきます.個々の方法論は,どのような生体情報使い,何を目的にするかで異なってきます.

2. 参考文献 以下の文献を紹介いただきました。

  1. 北川 源四郎:Rによる 時系列モデリング入門.岩波書店 (2020)
    ※時系列解析の基礎が丁寧に説明してあり,Rを使った分析法の紹介もあるので入門書としては良い本だと感じています.
  2. Bradley Efron, Trevor Hastie:Computer Age Statistical Inference, Student Edition: Algorithms, Evidence, and Data Science. Cambridge University Press (2021).
    ※コンピュータが大規模データを扱えるようになったから,できることを意識させてくれる本です.日本語訳の「大規模計算時代の統計推論: 原理と発展」もあるようです(私は英語版しか読んでいません).
  3. 井上 博 (編集),循環器疾患と自律神経機能,医学書院; 第2版 (2001/9/1)
    ※心拍変動解析についてはこの本か,以下の論文をおすすめします.
  4. Task Force of the European Society of Cardiology the North American Society of Pacing. Heart rate variability: standards of measurement, physiological interpretation, and clinical use. Circulation 93.5 (1996): 1043-1065.
  5. 中江悟司, 金子美樹, 清野健. ウェアラブル生体センサを活用した暑熱労働環境の評価と改善. 計測と制御 58.2 (2019): 96-101.
    ※今回の講義内容は,特許申請中のものが多く,全体をカバーできるレヴューはまだありません.
  6. Toru Nakamura, Ken Kiyono, Herwig Wendt, Patrice Abry, Yoshiharu Yamamoto. Multiscale analysis of intensive longitudinal biomedical signals and its clinical applications. Proceedings of the IEEE, 104(2), 242-261.
    ※時系列データのメンタルヘルスへの応用が紹介してあります.