シンポジウム「新しい金融データ分析とリスク管理手法」開催のご案内


2012年3月15日、筑波大学・東京キャンパスにて、リスク解析戦略研究センター共催シンポジウム「新しい金融データ分析とリスク管理手法」を下記の通り開催いたします。
案内用PDFはこちらからダウンロードいただけます。

概要

日時

2012年3月15日(木) 13:00~18:15

場所

筑波大学東京キャンパス文京校舎 134号室(東京都文京区大塚3-29-1)
東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷駅」下車、出口1より徒歩2分程度

参加費

無料(事前登録不要)

問い合わせ先

統計数理研究所 山下智志
yamasita@ism.ac.jp

【プログラム】

13:00-13:05
シンポジウム開催のごあいさつ

山下智志(統計数理研究所)

セッション1 金融データ分析と時空間モデル (13:05~14:50)

リスク・プレミアムの予測モデルとその応用

川崎能典(統計数理研究所 リスク解析戦略研究センター 准教授)

リスク・プレミアムの予測は、個別銘柄のバリュエーション・モデルへのインプットとしても、アロケーションの意思決定にも重要である。近年の学術的流れでは、単なる過去データ平均による推定から、状態空間表現を利用した「予測」に重点を置くモデルが注目を集めている。本報告では van Binsbergen and Koijen (2010)の枠組みを日本株にあてはめた推定結果を報告し、今後の実証分析の課題を探る。

SIML法を使った高頻度観測データの実務的解析について

佐藤整尚(統計数理研究所 リスク解析戦略研究センター 准教授)

SIML(分離情報最尤法)を使い、市場における高頻度観測データの解析について報告する。主なテーマは、実現ボラティリティの推定、ヘッジ、予測、トレーディング戦略などである。

Lee-Carterモデルの残差構造の解析とモデリング

井川孝之 (みずほ総合研究所 主席コンサルタント(総合研究大学院大学))

国際的に死亡率推計に用いられているLee-Carter(LC)モデルを日本の死亡率へ適用すると、残差には系列相関が認められ、年齢と時代を軸にとった残差局面にはうねりのようなものが観察される。Willet (2004)等が指摘するコーホート効果の可能性も踏まえながらLCモデルの残差を分析し、LCモデルの拡張法をひとつ新たに提案する。

セッション2 信用リスクデータとリスク管理の実際 (15:05~16:50)

信用リスク管理に関する最近の取り組み事例

森田和樹 (金融工学研究所 調査開発部 チーフアナリスト)

サブプライムショック以降、金融機関ではストレステストへの意識が高まっています。一般的なストレステストの方法は、マクロ要因から直接PD(デフォルト確率)にストレスを与え、ポートフォリオのリスク量を計測しています。しかし、この方法では個別企業の信用リスクを織り込んでいないため、ポートフォリオの特徴や弱点を捉えきれません。本講演では、個別企業の信用リスクを考慮したストレステストの取り組み例についてお話させていただきます。

銀行の信用リスク管理と信用リスク分析の実務

板垣治 (三井住友銀行 企業調査部 部長)

銀行では、行内格付制度により与信先あるいは案件毎の信用リスクの程度を適切に評価すると共に、信用リスクの計量化を行い定量的に把握・管理している。与信先の格付は、決算書等の データをモデルにあてはめて判定した財務格付を出発点として、 実態バランスシートや定性的な評価を反映して判定する。講演では、信用リスク管理の枠組みを紹介した上で、リスク分析を行う上での実務上のポイントを説明する。

パネルデータ分析による金融政策変更の影響の検証

清水信宏 (日本リスクデータバンク 調査企画部 部長)

リーマンショック以降実施された金融施策は,一時的に資金繰りが苦しくなった多くの企業を救い,マクロの観点からも企業のデフォルト率の改善に影響を与えたと考えられている.しかし、一方で,苦境から立ち直れそうもない企業の延命措置に過ぎないとの指摘もある.本分析では上記の政策の影響を受けたと考えられる先を一定の仮定の下で抽出し,政策による財務改善効果について分析,考察を行う.

セッション3 信用リスク計測の新しい視点 (17:05~18:15)

与信判断が確率変動する時の倒産企業の信用リスク値分布のモデル化

大野忠士 (筑波大学ビジネスサイエンス系 教授)

企業は信用リスク値がある一定の閾値(与信判断基準)を超えた時に倒産すると考
えるのが自然である。ここでは信用リスク値と閾値が共に確率変動するものと考え、
倒産企業分布のモデル化を試みた。

回収実績データを用いたLGDおよびELと計量化モデルの課題

山下智志 (統計数理研究所 リスク解析戦略研究センター 教授)

回収率やLGDの推計は、銀行のEL(期待損失率)やUL(非期待損失率)、バーゼルのリスクウエイトを計算する上で重要である。日本独自の習慣である信用保証制度や根抵当、デフォルト後の追加融資などはLGD推計の大きな要因であるが、データをベースにした統計モデルに反映することができていない。それをモデルに組み込む場合の問題点を解説し、推計の方法論について提案する。