ご挨拶

平成25年4月1日付けでリスク解析戦略研究センター長に就任しました。我々のセンターは平成17年に統計数理研究所が蓄積してきた統計解析手法やモデリング方法を基板として、リスクの評価・管理のための方法論を分野横断的に発展させ、新たな定量的リスク科学を築くために設立されました。以降、リスク科学に関わる諸分野の研究者ネットワーク=リスクNOE(Network of Excellent)として諸研究の推進および研究交流拠点としての活動を行ってきました。

この間、金融危機や震災、原発事故など大規模リスクの顕在化が発生し、リスク研究に対する社会の期待と要請が高まりました。また、情報通信技術の発展とともにデータベースが大規模化され、リスク評価においてデータ分析による裏付けを求められるようになりました。一方、リスク情報の利用が専門家だけでなく一般の方々に広がったために、リスク尺度のわかりやすさが問題になっています。

それゆえ、現代のリスク研究は、コアとなるリスクモデルの構築だけでなく、確率論、統計学、情報学などの基礎理論の発展や、リスクデータベースの構築管理技術の高度化、リスクに関わる人のリスク許容度や回避行動の分析、リスクモデルの実社会での実装とその評価などを扱う必要があります。

このような現状を鑑み、我々のセンターは金融、地震、医療、資源などの8つの応用分野におけるプロジェクトと、データベースおよびリスク数理の2つの基礎分野プロジェクトを推進しています。実務、理論、データの有機的な統合によって、より有用なリスク諸問題の解決方法の探索し、社会の安全と安心に貢献する基礎作りを目指しております。

大学共同利用の精神に基づき、センターは産・官・学の人々に対して、常にオープンであり、それが活動のエネルギーであると実感しております。今後とも、ご支援ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

統計数理研究所・リスク解析戦略研究センター長
山下 智志