平成17年度研究成果
H17年度は主に各課題のための研究体制を整え,研究を開始した.各課題で得られた知見・成果物の要点を次にまとめる.
映像データからの不変事象の学習検索(成果発表[1,2,3])
特徴量として色モーメント,Gaborテクスチャ,キーワードベクトル等を,学習機械としてSVMを用いた場合に,カーネル融合法がもっとも高い性能を示すという知見が得られた.
ダイナミカルシステムを用いた身体協調の不変原理の探求(成果発表[4])
コミュニケーションにおける身体的な,個人内ならびに個人間の協調に関する実験から,発話-身振り協調系と呼吸運動が密接に関わりながら協調系を組織しているという知見が得られた.また,屈曲と発声が同期するモードA,伸展と発声が同期するモードBに関して,結合再帰性分析により,
モードBよりもモードAにおいて,手首運動と呼吸運動とがより同期しているという知見も得たられた.
身体性制約下における外界データの不変情報抽出機械としての知覚神経回路の特定(成果発表[5])
パルス音もしくは純音を用いた実験において,学習とテストで同種類の音源を用いる場合には,両耳信号である神経発火パターンの一次結合情報のみに基づいて音源定位できるという知見が得られた.同時に,学習とテストで音源の種類が異なる場合には方向推定は難しいという知見も得られている.
対話データからの不変情報(コミュニケーション・パターン)を規定する要因の特定
マスターセラピスト(高いスキルを持つセラピスト)の特徴の定性的把握,臨床の立場,情報処理の立場,それぞれから求められるデータ要件の違いを整理に関する知見が得られた.成果物としては,家族療法での面接場面を対象としたデータ収集のためのプロトコル,およびサンプルトランスクリプト(対話を書き起こしたもの)1対話分がある.
この他に帰納的学習機械についてKernel CCAの収束に関する検討を行った(成果発表[6]).
知的財産権については,C)の課題に関連し,特許「松井知子,田邉國士,入野俊夫, “音源方向検出装置及び音源方向検出方法,”特願2005-271227」(成果発表[7])を出願した.
〔成果発表〕
[1] S. Ayache, G. M. Quenot, J. Gensel, and S. Satoh, “CLIPS-LSR-NII
Experiments at TRECVID 2005,”The TRECVID 2005 Workshop, 2005.
[2] Stephane Ayache, Georges Quenot, and Shin'ichi Satoh, “Context-Based
Conceptual Image Indexing,”International Conference on Acoustics,
Speech, and Signal Processing (ICASSP), 2006.
[3] Stephane Ayache, George Quenot, Jerome Gensel, and Shin'ichi Satoh,
“Using topic concepts for semantic video shots classification,”Proc.
of International Conference on Image and Video Retrieval (CIVR2006),
2006.
[4] K. Hayashi, N. Furuyama and H. Takase, “Intra- and Inter-personal
Coordination of Speech, Gesture and Breathing Movements,” 人工知能学会誌,
Vol. 20, No. 3, pp. 247-258, 2005.
[5] 松井知子,田邉國士,入野俊夫, “両内耳信号の相関情報を用いない音源方向推定,” 日本音響学会研究発表会講演論文集,3-Q-33
秋季 2005.
[6] Kenji Fukumizu, Francis R. Bach and Arthur Gretton, “Consistency
of Kernel Canonical Correlation Analysis,”Advances in Neural Informaiton
Processing Systems, 18. (2006) to appear.
[7] 松井知子,田邉國士,入野俊夫, “音源方向検出装置及び音源方向検出方法,”特願2005-271227.