研究紹介

モデル化と高効率データ処理に基づく無線データシステムの研究

研究目的と背景

 この研究は、新領域融合研究プロジェクト:機能と帰納のテーマのひとつとして行っている。(1)有益な科学技術をいかに生み出し、日本のリーダシップを確保できるか、(2)広く社会の発展(進歩とアメニティ)に寄与し格差を生じさせない、の2点に重点をおき、情報・通信の融合による新しい公衆情報サービスの実現を目的としている。

 IT社会を支えるツールとしてのコンピュータ技術は米国がリードし、一方、広帯域通信技術の点では携帯電話は日本がリードしてきた。「組み込みシステム」は日本の活路として可能性がある。組み込みシステムとして、情報と通信を結ぶ専用コンピュータに着目する。

顔写真

瀧澤 由美
モデリング研究系

研究の内容と特徴

 パーソナル通信サービス(PCS)はユーザ主体の新しいサービスを開拓した。その中で高品質画像、高速大規模データへの需要が急進展する一方、技術的には対応困難となっている。通信コストの過大、アクセスの困難、低い通信品質などを解決するため、(1)無線チャネルの広帯域化と(2)組込みシステムの高機能化の研究を進めている。特に、ホットスポットに依存しない広域公衆移動無線通信を実現する。これは無線LANとは異なる。さらに、(3)大規模データの圧縮を実現する高能率情報源符号化を残された命題として捉えている。

具体的内容

(1)広帯域無線チャネルの研究

 上記の困難な問題解決のために、情報通信理論、数理統計学を含む科学的方法の原点に立ち返り、モデル化とアルゴリズム(帰納)に基礎を置き、かつ高性能、省電力、低コストの通信システム(機能)の実現を図る。
  ディジタル通信システムにおける最も困難な技術は同期であろう。同期とは、信号の入力時刻を正確に決定することである。同期の高速化、高信頼化、コヒーレント伝送特性の向上と高速化に焦点を絞り、理論とシミュレーション技術の向上を図り、実現特性を明らかにしている。

(2)通信用高機能組込みシステムの研究

 実際のシステムに求められる多様で複雑な機能の中で、高品質画像を含む高速データ通信機能を最重要課題として組み込みシステムをモデル化(帰納)し研究を行っている。これにより低電力での画像処理を可能とするシステムの構築を目指す。
  データの処理量および処理速度から以下の構成を実現する。言語系を備えることによりソフトウエアのフレキシブルな構成を実現する。通信処理を基幹機能として含むOSを構成し、さらに高度な通信処理に対応するソフト/ハードウエアを並列的に設ける。また、メモリおよび制御ソフトウエアの管理により、矛盾するリアルタイム処理と必須の並列処理の実現を図る研究を行っている。

(3)検証のためのプロトタイプハードウエアの開発(検証)

 方式とアルゴリズムの検証のため、広帯域無線方式および高機能組込みシステムについて、プロトタイプハードウエアの開発を行っている。
  今後は、神経と情報の視点から画像の本質的研究に進みたいと考えている。

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