コラム

客員教授とAISMの仕事をさせていただいてコラム

本田 敏雄(一橋大学大学院経済学研究科)

2011年4月より現在まで、統計数理研究所で客員教授を務めさせていただいております。

その間2度にわたり統計数理セミナーで発表をさせていただき、さらに2011年4月より2015年3月までは統計数理研究所が発行する英文学術誌Annals of the Institute of Statistical Mathematics(AISM)のco-editorをさせていただきました。また2013年冬には、インド、台湾、日本において統計科学の研究を中心的に担っている研究所が毎年持ち回りで開催する国際シンポジウムISI-ISM-ISSAS Joint Conference 2013(台北)で講演もさせていただきました。

私の本務校は国立市にある一橋大学で、一橋大学と統計数理研究所の関係としては、早川毅先生が長きにわたりAISMのco-editorの仕事をされ、田中勝人先生も長年にわたり運営会議の委員を務められてきました。

ここでは、私のAISMの編集にまつわる体験を中心について書かせていただきたいと思います。まず簡単に結論を言えば、私が費やした手間と時間よりも、得たもののほうがはるかに大きかったということになります。

AISM編集の手間と時間は相当なものです。すべての投稿論文に対して適正な判断がされるよう、投稿論文にはすべて目を通して自分なりの意見を持つ必要があります。そして月2回の編集会議に出席する義務もあります。私は自宅が近いので普段は特に問題はなかったのですが、所用で出席できないときには、出先からスカイプで編集会議に参加したこともありました。

メリットはたくさんあります。例えば、AISMは国際的に知名度が高いため、AISMのco-editorと自己紹介すれば、実力以上に評価してもらえる場合があります。2012年冬にベルリンのフンボルト大に1ヵ月半滞在したときにもそう感じました。そこで出会ったDickhaus先生は、現在AISMのAEをされています。またミネソタ大のYang先生は、私が学会でお会いした際にAISM関係の話をしたのが縁でAEになられました。その他には、AEをされている著名な研究者とメールのやりとりなどで確実に名前を憶えていただくことができ、その後に内外の学会等で実際にお目にかかったおりに容易に会話に入ることができたということなどもあります。AE関係ではないのですが、編集上のやり取りにより、著名な研究者との間で似たような経験もありました。また多くの投稿論文、改訂論文、査読コメント、著者からのレスポンスを読むことにより、投稿のテクニックを学ぶことができたということもあります。

多くのメリットのなかで最大のものは、自分の研究分野を広げることができたということです。2011年当時、AISMへの高次元データ関係の論文の投稿が非常に多かったのですが、私には高次元データに関する知識はあまりありませんでした。AISMへの投稿論文を読むために勉強を開始し、ベルリン滞在中に論文を書き始め、その後もいくつかの高次元データに関する論文を書くことができました。

現在も客員教授を続けさせていただいており、この3月には、一橋大学でのリスクに関する研究会で招待講演をされた、国立シンガポール大学のYing Chen先生、香港科技大のYingying Li先生に、引き続き統計数理研究所でもリスクに関連する大変興味深い講演をしていただきました。以下の写真は、統計数理研究所での講演のお世話をいただいた、中野純司先生、川崎能典先生と両先生との写真です。Chen先生、Li先生ともに、統計数理研究所で講演できたこと、聴講者と議論できたこと(その後の懇親会も合わせて)を大変喜んでおられました。

Ying Chen先生(国立シンガポール大)を囲んでYingying Li先生(香港科技大)を囲んで

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