コラム

研究者間交流:マレーシア編

清水 邦夫(統計思考院)

 2014年4月1日から統計思考院の特命教授を拝命しています。それ以前の慶應義塾大学理工学部数理科学科在職中のときから数年間にわたり研究所の客員教授であったため、研究所にはなじみがあり、違和感なく溶け込めています。所内での主な仕事は共同研究スタートアップに関することですが、それについては別途ウエッブページが用意されているので、本欄では所内での別の関わりについて紹介しましょう。

 話はかなり前、1997年の12月に遡ります。インドのバラナシにあるバナーラス(ベナレス)・ヒンドゥ大学で開催された国際集会に参加する機会がありました。その集会でインド統計研究所のA. SenGupta先生とマレーシア・マラヤ大学(Universiti Malaya: UM)Institute of Mathematical Sciences(IMS)のOng Seng Huat先生に初めて会いました。SenGupta先生とは彼の研究分野の一つの方向統計学について共同の研究を行ってきましたが、その話の紹介は別の機会に譲るとして、ここではOng先生とその周辺の方々との交流に焦点を当てようと思います。

 Ong先生は離散分布論の研究者で、彼の研究分野は私の当時の研究対象とかなり近い部分があったので、その後、Ong先生と交流をもつようになりました。IMSには、ほぼ毎年のように訪問するとともに、一方でOng先生を慶應大学に招聘し、離散分布論に関して共同研究をしてきました。本欄を書くにあたり古いパスポートを取り出して確認しましたら、これまでに計14回マレーシアを訪問していました。そのうちのほとんどでUMに滞在もしくは訪問しています。日本の統計家のIMSへの訪問は私が最初とのことでした。Ong先生を通してOng先生の学生やUMの他の教員・学生を自然に知るようになり、私がIMSのセミナーで講演をしたときに聴講にきていた学生の中には総合研究大学院大学統計科学専攻に入学し学位を得た例もあります。また、UMで学位を取得し、他の大学の教員になっている人たちも何人か知るようになりました。

 これらの経緯のもとに、統計数理研究所とASEAN十か国のうちの一つのマレーシアにおける大学・研究所との間の研究交流に関して私が橋渡し役の一部を担うことになりました。2014年11月には、中野純司教授が国際諮問委員を務めたICMSFM2014がクアラルンプルで開催され、樋口知之所長がこの会議のキーノートスピーカーとして招待されたわけですが、組織委員長であったDr. Goh Yong Kheng(マラヤ連邦初代首相の名を冠するUniversiti Tunku Abdul Rahman大学の先生)とは以前からの知り合いであったため、会議の開催に向けていくらかの協力をしました。その会議の翌日に樋口所長、中野教授、栗木哲教授、井本智明特任助教、他とともにIMSを訪問(写真1)し、栗木教授による研究所の紹介とともに研究交流をしてきました。また、現在、所内では、山下智志教授、金藤浩司教授、井本特任助教とともに、「マレーシアに於ける地すべりリスク評価手法開発」プロジェクト(統計数理研究所ニュースNo.126)を進めています。これは、部分的に、ペナン島にあるマレーシア科学大学(Universiti Sains Malaysia)(写真2)の一グループとの協働プロジェクトと位置付けられる試みです。今後もこれらのような活動を通して交流を続けて行く予定です。

写真1:マラヤ大学Institute of Mathematical Sciencesにて写真2:マレーシア科学大学のキャンパスにて(筆者)

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