コラム

数学協働プログラム

伊藤 聡(数理・推論研究系)

 統計数理研究所は昨年11月より文部科学省の科学技術試験研究委託事業「数学・数理科学と諸科学・産業との協働によるイノベーション創出のための研究促進プログラム(略称:数学協働プログラム)」を実施しています。8つの協力機関(北海道大学数学連携研究センター、東北大学大学院理学研究科、東京大学大学院数理科学研究科、明治大学先端数理科学インスティテュート、名古屋大学大学院多元数理科学研究科、京都大学数理解析研究所、広島大学大学院理学研究科、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)と連携しながら、統計数理研究所はプログラムの中核機関として様々な業務を行っています。実施にあたっては、外部有識者により構成される運営委員会を設置し、関連学協会・大学等や諸科学・産業の意見を運営に反映させています。

 本プログラムでは、数学・数理科学的な知見の活用による解決が期待できる課題の発掘から、諸科学・産業との協働による問題解決を目指した研究の実施を促進するため、運営委員会において重点テーマを設定しています。昨年度は、@ビッグデータ、複雑な現象やシステム等の構造の解明、A疎構造データからの大域構造の推論、B過去の経験的事実、人間行動などの定式化、C計測・予測・可視化の数理、Dリスク管理の数理、E最適化と制御の数理、の6つの重点テーマのもと、ワークショップを公募し、運営委員会で審査、9件を採択し2月から3月にかけて実施しました。また、3月にはプログラムのキックオフを兼ねて「数学・数理科学と共に拓く豊かな未来」と題した一般向けのシンポジウムも開催しました(写真1)。今年度も昨年と同じ重点テーマのもとで、9件のワークショップを実施することが決まっています。

 今年度の新しい事業の一つに、スタディグループ方式の会合の実施があります。これは諸科学分野あるいは産業界からの具体的な課題の提供に基づいて集中討議を行うもので、今年度は統計数理研究所および協力機関が中心となって7件実施し、特に企業の研究者が参加しやすい環境の整備を検討していきます(写真2)。関連して、諸科学・産業側からのニーズのある数学・数理科学の特定のテーマについてチュートリアルセミナーの開催も計画しています。さらに、諸科学分野において数学・数理科学を活用することによる解決が期待できる課題や、ワークショップ・スタディグループで議論すべき課題の抽出を行うため、数学・数理科学研究者と協働相手となる諸科学分野(当初は材料科学および生命科学の2分野で実施)の研究者により構成される作業グループを設置しています。

写真1.数学協働プログラム開始記念シンポジウム 写真2.感染症モデリング小研究会

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