日米欧7か国国際比較調査(1985-93年)

調査対象日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、オランダ、イタリアの7カ国の男女個人
研究期間1985−1993年
調査項目政治、社会、文化、および生活一般等に関する意識75項目と属性項目
研究主体国民性の国際比較研究委員会
研究代表:林知己夫(特別推進研究)、鈴木達三・吉野諒三(試験研究)
調査概要我々は、昭和28年(1953年)から日本人の国民性に関する調査研究を始め、5年毎に全国調査を繰り返し、40年以上を経過してきた。こうして、時代とともに国民性の変化していく点、変化しない点を明らかにしてきた。この間、ハワイの日系人調査を1971年より始め、1988年まで行い、その比較を通して「日本人」というものを観てきた。1978年には、アメリカ本土調査を遂行し、日本人、ハワイの日系人・非日系人、アメリカ本土のアメリカ人を比較し、日本人、日系人の特色を掴むことができた。これを基に、国際比較の方法論としての「連鎖的比較調査分析法(Cultural Link Analysis)」の土台を築くことができた。「連鎖的比較調査」とは、国際比較調査にあたり、始めは言語や血縁などの点で類似性の高いと思われる国々の対を調査検討し、徐々に「比較の環」を拡大することにより、より広範囲の国々の意味のある比較を可能にする方法である。  これを踏まえて、1985-1989年度文部省科学研究費・特別推進研究「意識の国際比較方法論」(研究代表者:林知己夫)を企画、実施し、さらにこれを発展、確立することを目指した1992-1994年度文部省科学研究費・試験研究(A)「意識の国際比較における連鎖的調査分析方法の実用化に関する研究」(研究代表者:鈴木達三)を実施することになった。この一連の研究の目的は、異なる文化圏に属する人々の意識構造の比較研究のための方法論を確立し、それを具体的に適用して国際理解、国際協力の基礎となるべき知見を得ることである。連鎖的国際比較調査方法とそれに基づく統計的データ解析法が、この中心的役割をなす。また、1991年にはブラジルの日系人調査が遂行し、比較のための連鎖の一層の充実に努めた。

特別推進研究では、調査対象の国としては、日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ(ハワイを含む)をとりあげ、比較のための国の連鎖を形成した。次に、質問内容に関して、連鎖的国際比較可能性を追求するため、対象国に関する情報を収集、各国に共通すると思われる質問群を構成し、各国同一の質問票を作成した。これを各国語に翻訳し、予備調査、再翻訳(バック・トランスレーション)、各国研究者との意見交換などを通して、検討を重ね、各国版の質問票を完成した。各々の国・場所における適切な標本計画を立て、これに基づいて標本を抽出し、1対1面接法により調査を実施した。得られた回答データから、比較のための共通フォーマットのファイルを作成し、種々の統計的データ分析を行った。通常の分析法の他、ダイナミックな立場から考えの筋道を明らかにする数量化の方法等を用い、各国民の意識の類似な点、異なっている点を明らかにした。この過程で、従来巷間に言われていたことの確認にとどまらず、さらに従来の考え方では考え及ばなかった深い知見が得られ、詳細な分析結果を得ることができた。こうして、国際比較の連鎖的調査分析法の有効性を確認することができ、連鎖的国際比較の方法論が確立した。

この成果を受けて、試験研究(A)では、さらにイタリアとオランダにおける調査を実施し、われわれの連鎖的比較の方法を実用化するための研究を進めた。

我々は、この研究を遂行してくる中で、人文・社会分野の科学的研究にあっても、明確な方法論、的確なデータ獲得の方法と多様な計量的分析による相補的研究、それに基づく分析結果の上に立つ論述が重要であり、さらに追試の可能性の条件明示、将来の継続研究を可能にするための基本情報の記載があって初めて「科学的研究」としての意義があるという考えが重要であることを幾度となく認識してきた。今後、この成果を土台にし、これを越えた研究をさらに発展させる機縁としなれば幸いである。
サンプルサイズ日本4500、イギリス1043、フランス1013、ドイツ1000、アメリカ1500、オランダ1049、イタリア1048
調査票、集計表などの公開資料国別の集計表: 日本  イギリス  フランス  ドイツ  アメリカ  オランダ  イタリア
調査票   過去の公開情報
関連執筆物林知己夫, 鈴木達三, 吉野諒三, 他. (1998). 国民性七か国比較. 出光書店.
鈴木達三. (1996). 国際比較調査における標本計画と調査実施に関する一考察. 行動計量学, 23, 1, 46-62.
吉野諒三, 林知己夫, 鈴木達三. (1995). 国民性の国際比較調査の為の質問文の作成―翻訳のプロセスを中心として―. 行動計量学, 22, 1, 62-79.
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