例年、教育・文化週間(11月1日〜7日)関連行事の一つとして公開講演会を開催しております。この講演会では、一般の方を対象に、統計数理に関連したテーマをわかりやすくお話しします。
講演プログラム |
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伊藤聡(統計数理研究所 教授)マジックナンバーの数理−優勝、昇格まであと何勝?
野球やサッカーなどリーグスポーツの熱狂的なファンにとっては、ひいきのチームの順位が気になるものですが、シーズンも終盤が近づくにつれて、あと何回勝てばリーグ優勝が決まるのか、あるいは下部リーグへの降格を免れるにはこの先何敗まで許されるのか、などといった話題が聞こえてきます。シーズンが始まったばかりの時点では、残りの試合すべてに勝てば優勝は間違いないでしょうし、すべてに負け続ければ最下位は免れないでしょう。勝敗の組合せが有限であることを考えると、シーズン中のどの時点においても、最終的にある順位以上になることが確定する最小の勝ち試合数、もしくは逆にその順位に届かないことが確定する最小の負け試合数というものが存在することは明らかです。このようないわゆるマジックナンバーと呼ばれる類の概念は、特に野球に対して用いられてきましたが、リーグスポーツのみならずいろいろな遊びにも応用できそうです。マジックナンバーを取り巻く数理について、皆さんと楽しく考えてみたいと思います。
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後藤健生(サッカージャーナリスト)数字でサッカーを語ることは可能か
さまざまな記録や統計が語られる野球と比べて、サッカーの記録・統計というのは一般にはあまり馴染みがないのではないか? 新聞で紹介されるのはシュート数やCK、FKなどの数などくらいだろう。テレビ中継では「ボール支配率」という数字もよく使われる。ヨーロッパからの中継では選手の「走行距離」や「平均速度」などが紹介されることもある。さらに専門性の高いものでは「パスの本数」や「成功率」といった詳細な統計もあり、それもゾーン別、時間帯別の数字が準備されている。
しかし、そうした記録や統計は、野球の場合ほど大きな意味を持たないようにも思われる。たとえば「パス成功率」。パスというのはただ成功率が高ければ良いというものではない。「どのような状況で、どのようなパスをしたのか」が重要であり、"解釈"が伴わなくては意味を持たない。だが、サッカーでは状況を客観的に分類、表現することが難しい。 また、サッカーは番狂わせが多いスポーツだ。つまり、試合内容が結果に反映されないのだ。とすれば、サッカーの記録や統計には"原理的限界"があるということになる。 |
鳥越規央(東海大学理学部 准教授)統計学で野球は進化できるのか
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