2009年 8月駿河湾の地震の余震活動と静岡県中西部地域の地震活動
Seismicity
changes in the central and western district of Shizuoka Prefecture before the
August 2009 Earthquake of M6.5 at
統計数理研究所
The Institute of Statistical Mathematics
駿河湾の地震(M6.5)が2009年8月11日に発生したが,その後の余震活動を調べた.さらに想定東海地震の震源域を含む静岡県中西部における1995年以来の15年弱の地震活動の経緯を調べた.各地域の地震(余震)活動にETASモデルをあてはめ,有意な活動変化があるか否かを確かめ,その時空間変化を調べた.その上で地震活動の変化を調和的に説明できる地殻変動のシナリオを考えた.
駿河湾西岸地域(第1図地図内矩形領域)については地震活動が2004年ごろから若干低下し,2008年後半に回復している.時空間変化を見ると矩形領域中部ではやや活発化し,北部と南部では静穏化している.この領域内ではプレート境界地震が多数派としたΔCFSのパタンによると,駿河湾地震の断層1)または深部の前駆すべりがあったものとして考えることが出来る.想定東海地震断層2)深部延長北西部と駿河湾の地震断層は互いにCFSを増加させる関係にある.以下の地域の地震活動変化についても東海震源断層深部延長北西部のすべりモデルを考える.
静岡県西部の地殻内地震の活動(第2図)は2007年以後顕著な活発化となっている.時空間変化を見ると矩形領域東部全体で活発化して,三河地震の余震域の活動が静穏化している.受け手の断層メカニズムとして,F-netで決められた2007年後半からの地震のメカニズム解を使ったが,概ね第2図にあげたΔ「CFSのパタンになり,地震活動の変化に対応している.
静岡県西部のプレート境界およびフィリピン・プレート内の地震活動(第3図矩形領域)は全体として2004年2005年で静穏化しており,その後回復している.時空間変化を見ると矩形領域東部で静穏化している.受け手の断層メカニズムとして,F-netで決められた2001年の地震メカニズム解を使ったが,概ね第3図にあげたΔCFSのパタンになり,地震活動の変化に対応している.
想定東海地震断層深部延長北西部を跨ぐ,2000年から続いた浜名湖周辺の滑りに直交する,基線の距離の時系列を見た(第4図).基線距離の縮みまたは伸びの傾きが2004年紀伊半島沖地震を境に前後で変わっており,これまで仮定した滑りと矛盾しない.
駿河湾の地震の余震活動(第5図)については8月14日から現在(10月中旬)まで静穏化している.時空間変化を見ると本震直後は東部(本震付近)に余震の発生が少ないが時間を追って東部に拡大したが,13日半ば以降に余震域東部から時間を追って西部に静穏化が進んでいる.
本解析に関して地震研究所TSEISと気象研究所MICAP-G,データについては気象庁一元化震源データおよび防災科技研F-netデータを使用した.
(尾形良彦)
参考文献
1) 国土地理院, 2009, 予知連絡会会報, 77巻 掲載予定http://www.gsi.go.jp/kenkyukanri/kenkyukanri60003.html
2) 相田勇, 1981, 地震研究所彙報, 54, 329-341.
表1 駿河湾の地震断層のメカニズム1)と想定東海地震断層2)の深部すべりメカニズム
Table 1. Fault models of
the earthquake at
fault surface |
Long. (deg.E) |
Lat. (deg.N) |
Dep. (km) |
Leng. (km) |
width (km) |
Strike (deg.) |
Dip (deg.) |
Rake (deg.) |
slip (m) |
深部すべり2) |
138.1 |
35.3 |
35. |
50. |
35. |
198. |
34. |
71 |
0.4 |
駿河湾の地震1) |
138,5 |
34.78 |
17.5 |
16.7 |
5.6 |
309, |
25.0 |
122 |
0.77 |
図の説明
第1図 駿河湾西岸地域の1995年から本震直前までのM1.5以上の地震活動とΔCFF(本文参照).赤い地震累積曲線はETASモデルによる.
Fig. 1 Top
and middle panels: The seismicity (M>=1.5) around the
第2図 静岡県西部の地殻内地震の活動とΔCFF(本文参照).赤い地震累積曲線はETASモデルによる.
Fig. 2 Left
panels: The seismicity (M>=1.5) in the crust down to 27km depth in the
western
第3図 静岡県西部のプレート境界およびフィリッピンプレート内の地震活動とCFF.と地震活動.赤い累積曲線はETASモデルによる.
Fig. 3
Left
panels: The seismicity (M>=1.5) in the upper boundary and within subducting Philippine Sea Plate (deeper than 27km) in the
western
第4図 想定東海地震断層深部延長北西部を跨ぐGEONET基線の距離の時系列.
Fig. 4 Time series of the distances of the GPS baselines over the presumed slow-slip fault.
第5図 駿河湾の地震の余震活動.赤い累積曲線はETASモデルによる.
Fig. 5 Aftershock activity (M>=1.5) of the August 2009 Suruga Bay Earthquake of M6.5. The empirical (black) and the ETAS theoretical (red) cumulative curves with respect to regular and transformed time until 15 October 2009. Right and left panels are those assuming the change point and no change point, respectively. Bottom panel shows longitude against the transformed time