コラム

業績評価とデータベース

丸山 直昌(データ科学研究系)

 業績評価に対する社会的な要請が近年非常に高まっている。特に独立行政法人化以後はその傾向が顕著である。ここでは単に業績評価をやれ、ということだけではなく、それを第三者から見てもわかる形で表現せよ、ということが実質含まれていると言うべきであろう。また、最近の傾向として、単に学術論文の数というような単一の尺度ではなく、学会運営や教育活動、社会貢献活動なども含めて、多面的に研究者の活動を評価する方向に向かっており、さらに研究所全体として、機構全体としての総合的な評価も求められている。

 このような情勢から、評価という作業がこれまでとは随分と様相を異にするようになった。元々各研究者は、他研究者に対する評価を内心に持っていて、それを人事案件が持ち上がった時に出し合う、という作業は行っていた。しかし、今求められている評価は、これとは異質の作業である。また、この作業は、今や組織をあげて取り組む課題となっており、事務方までも巻き込むことになっている。

 この新しい作業では結局のところ、必要な情報をどれだけうまく収集するかが重要な要素となっている。従って評価に必要な情報を持つデータベースに話が向かうのは当然の成り行きであった。情報・システム研究機構でも、各研究所に使えそうな既存のどういうデータベースがあるかがまず検討され、また新しいデータベースを作る必要があるか、その仕様は、という話が出た。しかし、そこで一つ軽視されている点があるような気がしてならない。

 データベースを作るという作業は、データをただやみくもに集めるという話とは違う。データ収集の範囲を決め、フォーマットを決め、入力機構を作り、検索の仕組みを作るという作業を含むもので、それなりの労力を要するものであると思う。しかし、うまく設計すれば、多面的に役に立つものができる。重要な点は、これらの作業は、多面的に役に立つものであるからこそ報われるのである、と言う点にあると思う。もし、今後評価のためのデータベースを作る時に、特定の評価作業にだけに目を奪われて、それに照準を合わせた作り方をしてしまうと、多くの作業が報われない結果になるおそれがあると危惧している。そうならないためにはどのようにしたら良いか、作業にかかわっている者の一人として、思い悩んでいる。

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