Internet公開型統計ソフトウエア――Web Decomp の成果

 

1998年2月27日

佐藤整尚

 

  1. Web Decomp とは
  2. Web Decomp とは北川源四郎氏が開発した季節調整プログラムをWeb化して、インターネット上のどこからでもアクセスできるようにした統計ソフトウエアである。実質的な計算はサーバー側(研究所側)でおこなわれ、使い手にかかる負担が少ないのが特徴である。

     

  3. Web化の意義
  4. 通常のソフトウエアと異なり、ユーザーはソフトウエアのインストールなしに、利用可能である。また、ユーザー側のプラットホームにも特別な制限がない。特段の流通方式を持たないものにとって、これらは広くソフトウエアを使ってもらうためには必要であると考えられる。

    今回のようなインターネット公開型統計ソフトウエアは世界のもあまり例をみないので、画期的な事例といえる。回帰分析と違ってDecomp のようなやや特殊で一般的ではない手法はユーザーが使いやすい方法で公開することで、広く普及すると思われる。

     

  5. 研究所側の投資
  6. 当初、開発は佐藤が一人で行っていたが、新しいバージョンの開発には研究所のソフトウエア開発予算をつかい、外部のソフトウエア会社に一部を委託している。

    このソフトウエアを利用するにあっては、その計算のほとんどは研究所側で行われる。サービス開始当初は Pentium-Pro200MHz クラスのマシンでこれをまかなってきたが、現在はあたらしいバージョンをリリースしたのにあわせて、DEC Alpha 500MHz クラスに増強した。(COE予算で導入)

     

  7. 宣伝活動

今後もさらに宣伝していく予定である。

 

  1. アクセスのまとめ

このWeb Decomp対するアクセスをアクセス元及びアクセス時期別にまとめた結果が以下である。

ただし、統計数理研究所内からのアクセスは除いてある。Web Decomp内のファイルへアクセスでカウントした。

調査時期: 1997年6月より1998年1月まで

総アクセス数: 5990

 

6月

7

8

9

10

523

466

573

979

1249

11月

12月

1月

   

684

564

952

   

宣伝を行った後の9月、10月にアクセスが多かった。

 

*.AC.JP

*.OR.JP

*.NE.JP

*.CO.JP

*.COM

(日本の教育機関)

(プロバイダー経由)

(プロバイダーやOCN経由)

(日本の企業)

(アメリカの企業)

1414

786

759

726

284

 

*.GO.JP

*.AD.JP

*.NET

*.EDU

*.TW

(日本の政府機関)

(プロバイダー経由、Mesh等)

(アメリカ経由?)

(アメリカの教育機関)

(台湾)

171

152

66

53

23

 

*.HR

*.DE

*.UK, *.GB

*.TOKYO.JP

(不明)

(クロアチア)

(ドイツ)

(イギリス)

(東京都?)

 

17

17

14

14

1439

 

*他に BR(ブラジル)CA(カナダ)ES(スペイン)FI(フィンランド)HOKKAIDO.JP(北海道)、IN(インド)IT(イタリア)、LU(ルクセンブルグ)NL(オランダ)NTT.JPNTT)、RO(ルーマニア)SE(スエーデン)、SU(南ウラル) などからアクセスがあった。

 

この結果を見ると、意外に、個人(プロバイダー経由)や企業からのアクセスが多いと思われる。これは、学者向けというよりはもう少し、広い層を対象にサービスを行っているといえる。これから、統計数理研究所では社会一般にアピールすることが重要になってくると考えられるので、Web Decomp のようなサービスを充実させるのは大切なことである。

なお、これら、AC.JP以外からのアクセスについては、ネットワークの速度の遅さが指摘されており、調査、改善が必要と思われる。

 

  1. 付随的な成果
  2. Web Decomp についてはさまざまな問いあわせがよせられ、中には、共同研究に発展したものまである。(国土地理院とのGPSデータの研究)

    直接的なサービスの提供以外にもこのような付随的な成果が上がっている。

     

  3. 展望
  4. Web Decomp は1998年2月に新しくなりより使いやすいものになった。これから、更なる向上を目指して開発を行っていく予定である。また、統計数理研究所には優れた、ソフトウエアが存在しているので、これらのWeb化も進めていくべきである。

    同時に、上記で示しているように統計ソフトウエアに対する潜在的な需要はかなり大きいと推測されるので、統計数理研究所が統計ソフトウェア開発の中心的役割をになうように努めることがわれわれの責務であると考える。

     

  5. 謝辞

Web Decomp の開発に当たっては以下の経済的支援を受けている。


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