■13:30-13:40 開会挨拶・リスク解析戦略研究センターの紹介 加藤 昇吾
(統計数理研究所 リスク解析戦略研究センター センター長) |
■13:40-13:50 リスク研究ネットワークの紹介 伊藤 誠
(リスク研究ネットワーク運営委員長/筑波大学 システム情報系 教授/人工知能科学センター 副センター長) |
座長:村上 大輔(統計数理研究所 リスク解析戦略研究センター 副センター長) |
■13:50-14:30 「今こそ必要な統合的リスク科学~リスク解析戦略研究センター・NOE活動創成時の思い~」 椿 広計
(情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 副施設長) 2004年秋、北川源四郎先生(当時ISM所長)から、ISMにNOE形成の戦略センターとしてリスク評価センターを設立への協力要請があった。
当初は、社会的要請が大きく、統計応用分野の支援が受けられるプロジェクト形成構想であった。
小生が所属していた筑波大学の同僚と設立準備WSを3回開催する中で、統計科学・情報学からなる分野横断的・統合的リスク科学形成に重点が移り、
そのハブ機関としてリスク解析戦略研究センターとNOEが2005年4月に設立され、2005年11月に設立記念シンポジウムが開催され、いくつかの支援プロジェクトも形成された。
筆者がセンター長を退任した2012年度末までには、システム工学的視点も含めリスク情報・システム科学という理念と推進組織形成を日本学術会議マスタープランに提案することも
NOE総会で合意された。
講演ではリスク解析戦略研究センター設立前後やNOE設立後の議論やISM並びに、現在振り返るべきNOEでの議論について紹介する。
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休憩 14:30~14:40 |
■14:40-15:20 「階層ベイズモデリングを用いた海洋データ分析」 菅澤 翔之助
(慶應義塾大学 経済学部 准教授)
海洋データの統計解析では、位置や時間の情報を伴うデータが広く利用されており、精度の高い予測や補間を行うためには、データに潜む時空間相関を的確に捉えることが不可欠である。
本講演では、階層ベイズモデリングの枠組みに基づく時空間モデルの研究をいくつか紹介する。
具体的には、観測点ごとの採取数を対象としたゼロ過剰時空間ポアソンモデル、さらには連続変数や離散変数といった多様な種類の応答変数が混在する多次元データに対して、
空間相関の影響を統計的に切り分けて解析するためのグラフィカルモデルを取り上げる。
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■15:20-16:00 「計画経済としての実験計画」 成田 悠輔
(半熟仮想株式会社 代表/イェール大学 助教授) ランダム化比較試験(RCT)やA/Bテストの設計を考える。これらの実験は数億人規模の被験者の生活に影響を与えている。
被験者の厚生を考慮すると、できるだけ素早く結論を出し、有害な処置を被験者に割り当てない実験設計が求められる。
そのための試みを二つ提示する。まずは昔から広く研究されている統計的に効率な推定を可能にする実験計画を示す。
次に代替的な方法として、「市場としての実験(Experiment-as-Market, EXAM)」と呼ぶ実験設計を提案する。
実験計画問題を「処置(=商品)を被験者(=消費者)に確率的に分配する計画経済問題」として解くことで
被験者の厚生を最大化する、経済的効率性を重んじるアプローチである。
統計的効率性に基づく方法と経済的効率性に基づく方法を比べながら、実験計画の理論と実装の未解決問題を展望する。
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休憩 16:00~16:10 |
■16:10-16:50 「リスク科学的視点によるファイナンスモデルの歴史・系譜・課題」 山下 智志
(統計数理研究所 所長) リスクとは社会の意思決定に普遍的に関わるテーマであり、その数量化は金融分野で先駆的に進められてきた。
本講演では、リスク科学の視点からファイナンスモデルの歴史と課題を紹介する。
国際的な規制の下で発展した信用リスク統計モデルは、不確実性を数値で捉える挑戦として大きな役割を果たした。 しかし2010年頃までは学術と実務が協働し、研究成果が政策や金融機関の判断に直結していたのに対し、その後は両者の距離が広がった。 その背景には、学術論文が高度化する一方で専門外の人には理解困難なほど複雑化したこと、また実務データの規模が研究者個人の処理能力を超え、 機関横断的な計算資源や体制が不可欠となったことがある。データサイエンスの観点から見れば、これは「理論とデータをどう結びつけるか」という普遍的な課題を示している。 本講演では金融リスク研究の歩みを手がかりに、社会の多様なリスク問題に通じる知見を展望する。 |
■16:50~17:00 閉会の挨拶
村上 大輔 (統計数理研究所 リスク解析戦略研究センター 副センター長) |