平成292017)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

29−共研−2008

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

データ同化によるプラズマ圏時空間変動の推定手法の開発

フリガナ

代表者氏名

ナカノ シンヤ

中野 慎也

ローマ字

Nakano Shin'ya

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

19千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

電離圏は,電離した気体が中性の気体と共存する地上高度80kmから1000km程度の領域である.電離圏で起こる擾乱は電波通信等に大きな影響を与える可能性があるため,電離圏の状態の把握,予測は重要な課題となっており,現在,イオノゾンデ観測や,大気光観測,GPS衛星などの測位衛星を用いた全電子数観測など,様々な手段による電離圏観測が行われている.特に,全電子数観測は,日本上空や米国上空などにおいて空間的に高密度な観測網が展開されており,電離圏の詳細な情報が常時取得できるようになってきている.一方,電離圏の上には,無視できない量のイオン・電子が分布するプラズマ圏と呼ばれる領域がある.プラズマ圏は,GPSなどの測位衛星による全電子数観測において無視できない効果を持つほか,放射線帯と呼ばれる非常に高いエネルギー粒子が分布する領域の発達,減衰に重要な役割を果たしていると考えられており,近年,プラズマ圏の刻々の変動を把握,予測する必要性も非常に高まっている.
我々は,測位衛星の全電子数観測データや国際宇宙ステーションからの撮像観測(ISS-IMAP;Ionosphere,Mesosphere, upper Atmosphere, and Plasmasphere mapping)のデータを活用し,電離圏,プラズマ圏のグローバルな時空間変動を推定する手法を開発することを目指し,研究を進めている.測位衛星の受信点は地上に多数分布しており,多数の点の全電子数データを合わせることで,電離圏,プラズマ圏に関する広範囲にわたる情報を得ることができる.一方,国際宇宙ステーションからの撮像観測では,カメラからの限られた視野からの情報しか得られないが,全電子数データでは分からないヘリウムイオンや酸素イオンの量に関する情報が得られる.このような情報を統合することで,電離圏,プラズマ圏の変動を詳細に知ることができると考えられる.特に本研究では,プラズマ圏の時間発展に焦点を当て,データ同化手法を用いてプラズマ圏のイオン・電子分布の時空間変動を推定する技術の確立を目指している.

平成29年度は,プラズマ圏の時空間変動推定に必要となるプラズマ圏イオン・電子分布と観測データとの関係を記述する観測モデルの構築を進めた.本研究で用いる観測データのうち,ISS-IMAPの撮像観測データは,複雑な散乱過程を経た上で観測器に到達する散乱光を観測したものである.そこで,以前から開発を進めている散乱モデルに基づいて観測モデルの構築作業を進めた.また,京都大学で1回打ち合わせを行い,観測モデルの設計に関して議論を行った.データ同化手法に関しては,平成28年度に,プラズマ圏プラズマ密度分布の推定時に問題となる非線型性を取り扱うために,カーネル法を組み込んだアンサンブルカルマンフィルタについて検討した.しかしその後,必ずしも効率的とは言えないことが分かったため,当初予定していた局所アンサンブル変換カルマンフィルタの実装を進める一方,局所粒子フィルタの適用についても検討した.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

S. NAKANO: "Various aspects of data assimilation techniques and expansion of their applications", The 8th Symposium on Polar Science 招待講演 立川 2017年12月7日

中野 慎也 P. C. Brandt M.-C. Fok: "Data assimilation experiment for reproducing the temporal evolution of the inner-magnetospheric environment", JpGU-AGU Joint Meeting 2017 ポスター発表 千葉 2017年5月22日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催していない.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

池田 孝文

京都大学

齊藤 昭則

京都大学