昭和611986)年度 共同研究集会実施報告書

 

課題番号

61−共研−35

専門分類

5

研究課題名

幾何学的構造・空間パターンと統計

フリガナ

代表者氏名

オガワ トオル

小川 泰

ローマ字

所属機関

筑波大学

所属部局

物理工学系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

22 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

幾何学的構造の統計処理には,量の統計では済まず,質の統計とでもいうべきものが必要となる。互いに独立と見なせる構成要素の大きさ等についてならば,さほど困難はないが,形やつながりを問題にすると,形の分類,形と形の相互関係,規則配置の存在やそれに伴う相関等(統計処理以前にも考慮すべき未解決の問題が多いが),統計的手法の整備・充実が望まれる。
一方,1985年には「形の科学会」が発足し,国際シンポジウムが開催されるなど,「形」の科学的研究についての学際研究の組織化が進み,わが国がこの方面で先進的な役割を果たすことが期待されている。統計数理研究所も,創立40周年シンポジウムや1月開催予定の研究会等を通じて,この分野での統計的研究について重要な役割を果たしつつある。今回提案する研究会の主な目的は統計的観点での議論を整理する事である。なお,1960年代からこの分野の先駆的研究を行なっているR.Collins(Salford大)が筑波大に滞在の予定であるので,彼を交えた議論も期待できる。


10月24・25日の二日間に亘り,研究会を開催した。講演,研究発表数13,参加者数50であった。
長年統計幾何学的液体論の研究に携わる英国Salford大学のRobert Collinsが滞日中であったので,今回の研究会には,中心テーマを設けた。グラフ論的あるいは位相幾何学的に捉える「つながりの問題」と,「連続量的記述」の関連についてである。幾何学的グラフ論についての招待講演を中心に,活発な討論が行われた。
Collinsは,情報エントロピーのKullback−Leibler表式を統計幾何学的液体論に適用した。Kullback−Leibler表式は,統計物理学の分野ではまだ馴染みが薄い。独立な情報の数と物理的な独立自由度の数との関係など,未解決の問題もあり,今後の発展が期待される。物理学の立場では,無限系に対する近似理論としての有効性が期待され(外の期待もあるが),有限数の入力データからの推定問題としてとは別の観点からの価値がある。
その外,細胞の形態,Voronoi分割,fractalによる画像構成,random充填,結晶の対称性分布,非晶質構造等についての発表,討論があった。
形の研究が数理科学として着実に進歩しつつあり,その中で,統計数理研究所が,重要な役割を果たしていることが,実感された。
なお,この共同研究課題の一環として,6月11日に研究会「ペンローズ・パターンとその周辺」を開催した。周期性を持たない新しい構造秩序である準結晶構造の研究に携わる物理学者と,数学者,図学者,紋様研究者,芸術家,パズリストなど,別の角度からこの問題に関心をもつ人達との討論の場とした。構演数8,参加者60を数えた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

有田 清三郎

関西医科大学

伊藤 栄明

統計数理研究所

大島 敏男

姫路工業大学

尾形 良彦

統計数理研究所

北原 和夫

東京工業大学

腰塚 武志

筑波大学

坂元 宗和

東京大学

高木 隆司

東京農工大学

種村 正美

統計数理研究所

田村 義保

統計数理研究所

鳥脇 純一郎

名古屋大学

長坂 建二

放送大学

長谷川 政美

統計数理研究所

樋口 伊佐夫

帝京技術科学大学

古山 正雄

京都工芸繊維大学

堀 素夫

東京工業大学

本多 久夫

兵庫大学

間瀬 茂

東京工業大学

松下 貢

中央大学

山科 健一郎

東京大学

渡辺 龍三

東北大学