平成232011)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

23−共研−4

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

3

研究課題名

看護科学分野における家族のヘルスプロモーションに関する縦断調査および横断調査のデータ解析

フリガナ

代表者氏名

キシダ ヤスコ

岸田 泰子

ローマ字

Kishida Yasuko

所属機関

杏林大学

所属部局

保健学部

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

 急速な少子化の進行に伴い、ライフスタイルは多様化し、次世代を担う子どもたちを健やかに育成するための支援策が各方面から推進されている。看護科学分野においても、母子およびその家族の健康を保持増進するための様々なケアの提供が実践され、評価を行っている。本研究は子どもをもつ家族が子どもの発達に伴い、夫婦関係、家族関係をどのように変化させているのかを看護学の視点から探求し、また家族成員が健康を保持増進するための要因の解明と必要とされる看護ケアについて考察することを目的としている。家族への健康教育を盛り込んだアクションリサーチを含め、横断的にその評価を行い、また夫婦関係、家族関係についての縦断的調査を行った。
 そのうち今年度の研究課題として夫婦が妊娠中から出産後6年までの計8回の縦断調査の結果を用いて、夫婦の生活満足感に影響する要因について夫と妻を比較し、その特徴を検討した。調査内容は、生活満足感、生活の変化、育児ストレス、夫婦関係の満足度(Quality Marital Index)などである。初回調査で回答が得られた1,200カップルに対して、出産後4カ月、1年、その後1年ごとに調査票を配布した縦断調査であったが、2回目以降にドロップアウトしていく対象者が多くみられ、最終的に出産後6年の調査では66組の回収に留まった。そこで、ドロップアウトした対象者らと、継続的に調査への回答が見られた者らの主たる結果を比較したところ、夫婦関係、生活満足度に有意差は見られなかった。
 次に夫婦関係の満足度を従属変数とし、どのような要因にそれが規定されているのか、を重回帰分析によって夫と妻の特徴を調べた。概要をまとめると、妊娠期から出産後4カ月にかけては、夫も妻も多くの要因に有意差が認められた。出産後1年からは、夫婦関係の満足度の規定要因は、夫、妻ともに思いやり・やさしさやコミュニケーション、生活満足度に集約され、そのパターンは出産後4年目まで同様であった。出産後5年目以降は一変し、夫は家事分担に満足していること、妻は生活満足度が夫婦関係満足度を規定するという特徴が見られた。子どもの成長による生活変化が夫婦関係の満足度に影響していることが予測された。本調査による結果から夫婦関係の満足度の変化が夫と妻のそれぞれにおいて異なるパターンを示すことがわかるが、縦断調査として、調査票の回収が十分ではなく、限界は否めない。今後はこの結果を踏まえて新たな調査研究へと発展させ、またアクションリサーチの結果も統合して家族支援の方法を模索したいと考えている。