平成182006)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

18−共研−2034

専門分類

7

研究課題名

クローン植物における繁殖特性と遺伝構造の空間解析

フリガナ

代表者氏名

オオハラ マサシ

大原 雅

ローマ字

OHARA Masashi

所属機関

北海道大学

所属部局

大学院地球環境科学研究院

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

120千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

<目的>
この研究では、種子による有性繁殖と栄養繁殖の両方を行うクローン植物スズランの生態的・遺伝的データ対象に、統計数学的手法により
(1)クローン植物集団のラメット・ジェネットレベルでの個体群構造とその動態を評価する指標、また空間構造の新たな解析方法を試みること
(2)モデルやシミュレーションにより、繁殖様式を含めた生活史特性、遺伝的構造及びその相互に及ぼす影響を明らかにすること
を目的としている。
<経過>
野外調査:2003年より続けている調査の継続
6月10日−20日測定コドラート・トランセクトプロット内のシュートの
追跡モニタリング調査
  7月10日−20日花序内の果実数の測定と結果率の算出
      9月26日−30日コドラートプロット内の地下部掘り起こし
遺伝分析: 6月21日−30日葉サンプルの採取
11月10日−30日遺伝分析及び解析
数理解析: 8月27日−29日開花ラメットの空間分布が繁殖成功に与える影響に関わる解析
       10月26日−28日ラメットの追跡調査及び掘り取りによる連結調査のデータを
用いた繁殖動態に関する解析
3月 1日− 4日上記データによるクローンの時空間的広がりの解明
<結果>
 Pair correlation関数による空間解析の結果、ラメットは集中分布を示し、特に異なるジェネットのラメット間で隣接する可能性が高かった。結果率は異なるジェネットが近隣に存在するラメットで高かった。反対に、同一ジェネットのラメットが近いと低く、間隔が広がるにつれて次第に増加する傾向が見られた。従って、自家不和合性であるこの種の種子繁殖には、ポリネーターを介した他家花粉の受容が最も重要であることが明らかとなった。
 ラメット間の連結データを併せた解析では、地上シュートでの集中分布に対し、地下茎は主に直線的に伸長し、離れたラメット間で連結していることが示された。また、クローン成長は小さなラメットや新たに加入したラメットでも行われていることが明らかとなった。さらに、ラメットは開花とクローン成長を繰り返し行うことができ、開花はクローン成長後に生じる傾向が認められた。
このように、遺伝マーカーを用いてクローンを識別し、空間的な位置を把握したラメットについて、空間解析と個体群統計遺伝学的解析を併せて行うことが、クローナル植物の個体群構造及びその動態を調べる上で有効であり、新たな解析手法の確立に繋がるものであると考えられる。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

<論文など>

(1) Ohara M., Araki K., Yamada E. and Kawano S.「Life-history monographs of Japanese plants. 6: Convallaria keiskei Miq. (Convallariaceae)」Plant Species Biology, 21: 121-127, 2006.
(2) Araki K., Lian C.L., Shimatani K. and Ohara M.「Development of microsatellite markers in a clonal perennial herb, Convallaria keiskei」Molecular Ecology Notes, 6: 1144-1146, 2006.
(3) Araki K., Shimatani K. and Ohara M.「Floral distribution, clonal structure, and their effects on pollination success in a self-incompatibleConvallaria keiskei population in northern Japan」Plant Ecology, 189: 175-186, 2007.
(4) 大原雅・島谷健一郎・練春蘭・荒木希和子「クローン植物における繁殖特性と遺伝構造の空間解析」統計数理学研究所共同研究リポート, 193: 1-61, 2006.

<学会発表>

(1) 荒木希和子・島谷健一郎・大原雅「Clonal植物スズランの開花ラメットの空間分布パターンと繁殖成功」第70回日本植物学会,熊本,2006年9月.
(2) 荒木希和子・島谷健一郎・大原雅「クローナル植物スズランの繁殖動態−追跡調査と掘り取り調査から明らかになったこと−」第38回種生物学シンポ,マキノ,2006年12月.
(3) 荒木希和子・島谷健一郎・大原雅「スズランの地下茎によるクローン成長が個体群の空間的構造に与える影響」第54回日本生態学会,松山,2007年3月.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

荒木 希和子

北海道大学

島谷 健一郎

統計数理研究所

練 春蘭

東京大学