平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2006

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

地球電離圏及びプラズマ圏における時空間変動のモデリング・推定手法の開発

フリガナ

代表者氏名

ナカノ シンヤ

中野 慎也

ローマ字

Nakano Shin'ya

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

55千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

電離圏は,電離した気体が中性の気体と共存する地上高度80kmから1000km程度の領域である.また,電離圏の電離した気体は,さらに上の地上高度20000km付近にまで広がっており,この領域はプラズマ圏と呼ばれる.電離圏やプラズマ圏の状態は太陽活動や下層大気の影響により,日々刻一刻と変化している.特に電離圏の変動は電波通信等に大きな影響を与える可能性があるため,電離圏の状態の把握,予測は重要な課題となっている.また,プラズマ圏も,測位衛星による全電子数観測において無視できない効果を持つほか,放射線帯と呼ばれる非常に高いエネルギー粒子が分布する領域の発達,減衰に重要な役割を果たしていると考えられており,その変動の把握,予測が重要な課題になりつつある.本研究では,電離圏・プラズマ圏の短期的予測を行う技術を確立することを目指して,電離圏・プラズマ圏の時間発展過程をモデリングする手法の検討・開発を行うとともに,そのモデルを活用した電離圏・プラズマ圏の状態を精度よく推定する手法の開発を試みている.
今年度は,昨年度から始めた国際宇宙ステーションからの撮像観測(ISS-IMAP; Ionosphere, Mesosphere, upper Atmosphere, and Plasmasphere mapping)によって得られる電離圏,プラズマ圏からの散乱光強度のモデリング研究に注力した.ISS-IMAPでは,ヘリウムイオンからの散乱光と酸素イオンからの散乱光の2種類の波長の散乱光を観測しており,電離圏,プラズマ圏のヘリウムイオン分布,酸素イオン分布を知るための有用なデータとなっている.このうち,ヘリウムイオンからの散乱光に関しては,太陽からの入射光が1回だけ散乱されて観測されるという仮定が妥当と言えるため,ヘリウムイオン分布の推定も比較的容易である.しかし,酸素イオンの散乱光に関しては,電離圏,プラズマ圏中で複数回散乱される可能性を考慮する必要があり,データの解釈の際に問題になっていた.そこで,酸素イオン分布の推定に役立てるため,与えられた酸素イオンのもと,太陽からの入射光と観測される散乱光強度との関係をモンテカルロ法を使って順問題を解くモデルの開発を行った.開発は,京都大学で1回の打ち合わせを行った他,研究会の機会に打ち合わせを行うなど,メンバー間で情報交換をしながら進めた.酸素イオン分布の逆推定手法の開発には着手することができなかったが,平成28年度以降,進めていく予定である.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

中野慎也 (2015) プラズマ圏データ同化の現状と今後の計画, 大阪電気通信大学エレクトロニクス基礎研究所ワークショップ「プラズマ圏の観測と予測モデルの構築」, 寝屋川市.
中野慎也, Brandt, P., Fok, M. (2016) 宇宙プラズマ撮像観測とデータ同化, 第71回 CAVE研究会,立川市.
中野慎也 (2016) 地球磁気圏データ同化の現状と今後の展開, 第6回データ同化ワークショップ,横浜市.
齊藤 昭則 (2016) GNSS・光学観測データを用いた電離圏・プラズマ圏構造の逆問題解析, 名古屋大学宇宙地球環境研究所研究集会「電離圏・磁気圏モデリングとデータ同化」,名古屋市.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本共同研究に特化した研究会は開催していないが,他研究会等で,本共同研究に関する議論を行った.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

齊藤 昭則

京都大学

佐藤 大仁

京都大学

穂積 裕太

京都大学