平成31991)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

3−共研−40

専門分類

5

研究課題名

アモルファス構造の上のスピン配置の研究

フリガナ

代表者氏名

タネムラ マサハル

種村 正美

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

各々の粒子がスピン(ベクトル量)を持つ粒子系の構造が結晶格子でなくアモルファス状のランダム構造である場合平衡なスピン配置がどの様になるかは基礎的で興味深いところであるが,これまであまり研究が行なわれていない。われわれは,この問題をモンテカルロ・シミュレーションを用いて探求する。他の分野への応用も可能である。


スピン(方向性をもつ単位ベクトル)が空間に配置された点(粒子)に付随しているとき、これらのスピンが示す挙動や特性にわれわれの興味がある。モデルを限定するために、スピン間の相互作用は隣接サイト(すなわち隣接粒子)にのみ働くとする。これまでの共同研究において、われわれは粒子系の構造が結晶格子の場合を考察してきた。そして、スピン相互作用のモデルとしては XYモデル(X−Y平面内を動き得る単位ベクトル)およびハイゼンベルグモデル(球面上を動き得る単位ベクトル)を中心に計算機シミュレーションを行ってきた。その結果、これらのモデルにおいてスピン・グラスと呼ばれるある種のランダム相と秩序相との間の二次相転移、もしくはカイラリティ転移が起こる可能性を指摘することができた。しかし、背景となる粒子系の構造にランダムネスが入り込むとスピン系の振舞いがどのようになるかについては大変興味深いところであるが、ほとんど研究が行われていない。
ところが、隣接相互作用(Jとする)が隣接サイト間の距離に依存しないと仮定すれば、粒子構造が結晶格子から少し乱れている場合でも、理論的結果を含めた多くのこれまでの結論は成立することと考えられる。この仮定はいくつか現実的問題では成立すると考えられる。この観点から、スピン配置が与えられたとき逆にスピン間相互作用を推定する尤度法を考察し、生物学データなどへの応用例を示した。また、粒子配置が高密度アモルファス構造のランダムネスを持つ場合も興味がある。この問題に対して、ランダム充填構造を計算機シミュレーションによって実現し、その上のネットワークとして、Delaunay三角形分割を与えて、現在、XYモデルおよびHeisenbergモデルについて計算を行っている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

H.Kawamura & M.Tanemura,Magnetic structure of a Heisenberg spin glasses in a magnetic fieid,J.Phys. Soc. Japan, Vol.60, No.3, 1992年5月

M.Tanemura, Likelihood estimation of directional interaction, US/Japan Conference on the Frontiers of Statistical Modeling, 1992.05.29

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

粒子のアモルファス構造のモデルとして,ランダム充填モデルを採用する。各粒子に付随するスピンのモデルにはイジングモデルやハイゼンベルグモデルを考える。スピン間の相互作用を計算するために粒子系の隣接関係を設定しなければならないが,それにはDelaunayネットワークを導入する。これはランダム構造の粒子系のVoronoi分割による隣接関係であり,結晶構造ネットワークの自然な拡張である。モンテカルロ法によって種々の相互作用のパラメータ値に対するスピンの平衡状態を実現し,粒子配置とスピン配置の関係を探る。種村はランダム充填モデルやVoronoi分割を手掛けており,川村はスピン系の研究を続けている。統計数理研究所の乱数発生装置がこの研究に有用である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川村 光

大阪大学