平成292017)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

29−共研−2005

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

課題の親しみやすさに配慮した簡便で反復計測に頑健な脳機能計測法の開発

フリガナ

代表者氏名

キクチ センイチロウ

菊地 千一郎

ローマ字

Kikuchi Senichiro

所属機関

群馬大学大学院保健学研究科

所属部局

リハビリテーション学講座

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

3千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

【研究概要】精神疾患の治療には、薬物療法、作業療法、反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)のように、治療に長期間を要するものが多い。治療進行中の脳活動を、非侵襲的、かつ低拘束という特徴を持つ近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)検査を用いて経時的に計測して、判定し、かつ方針を修正することは、より効率的
で効果的な精神科医療に貢献する可能性を持つと申請者は信ずる。NIRSは、頭皮の上から近赤外線を照射反射光強度の時間的変動から、脳の活動部位を推定する装置であり、精神医学、心理学など多くの分野でヒトの脳機能計測に用いられている。ここで、NIRS検査を精神科の長期間治療の経過観測に用いるためには
、ふたつの要素が欠かせないと考える。ひとつめは幅広い臨床応用を可能とする携帯性である。従来のNIRS検査機器は、移動は可能なものの、大きくて重く、臨床の現場に容易に移動できるとは言いがたい。
しかし、近年発売されたウェアラブルNIRSは、ヘッドセット、計測コントローラーが大変コンパクトに設計されており、従来のNIRS機器と比べ携帯性に優れているため、作業療法の現場、ベッドサイドなど臨床
の現場に出むき、測定することを可能とする。ふたつめは馴化の克服である。認知課題は、反復することにより生じる馴化作用により、課題負荷による反応が低下してしまい、アーチファクトとしての影響が無視できなくなる。昨年度の研究で経時的に「後だしじゃんけん課題」(drRPS)に加え、比較的馴化に強いと言わ
れている文字ストループ課題(cStroop)と、ストループ派生課題のひとつである動物ストループ課題(aStroop)を用いて馴化の具合を健常被験者14名に4週間にわたって行ったところdrRPS,aStroopでは、馴化の影響が強かったものの、cStroopにおいては、前頭葉左関心領域では2週までは馴化の影響が認められず、
右関心領域に至っては4週にわたって馴化の影響が認められなかった。そのため、cStroopとウェアラブルNIRSの組み合わせが現時点でもっとも当初の目的に合致した課題であると結論づけられた。
【目的】ただし、cStroopをそのまま採用するには2つの問題が残る。ひとつめは、cStroopは、課題として難しいということである。漢字を文字を見せて色の判断をさせることは成人はともかく小児にとっては難しい。ふたつめは、解答までのキー入力の問題である。解答に要する反応時間の測定までにはキーを入力する必要があるが、被験者は検査に対して、赤に対応するキーなど、キーの配列を学習しなければならない。そこで、申請者は、昨年の研究成果を元として、cStroopに加え、文字の判断をせず、キー入力の学習が不要となるストループ派生課題を2つ採用し、ウェアラブルNIRS上で、馴化が少なく、かつ、ルールが理解しやすく、キー入力が容易な検査の開発を行った。
【経過】本年度は課題の親しみやすさに配慮した検査課題を選択した。具体的には、cStroopは抽象的であるため、cStroop課題に加え、具体的な概念を採用した課題選択を行った。ひとつ目は数字ストループ課題(dStroop)である。これは例えば同一の数が並んでいる数字の桁数をキーで入力するというものである(例えば44444が表示された場合、この数字は5桁であるため、5と入力しなければならない)。もうひとつはリアルサイズストループ課題(rStroop)である。これは小さな動物群(リスと小鳥)と大きな動物群(ゾウとクマ)からそれぞれ1つのシルエットが左右に大きさを変えて提示されるが、検査者はシルエットの大きさではなく、現実世界で大きな動物群を答えなければならない。これら3つの課題を、90秒の安静課題で挟んだ60秒の刺激課題で試みたところ、全ての課題で経時的に予想に反して酸素化ヘモグロビンの変化量が減少していた。
【考察】前頭葉を賦活させる認知課題を施行したにもかかわらず、全ての課題で脳活動の低下が認められた。これには、入力方法に原因があるかと思われる。昨年度の研究は被験者は発生により回答を行っていたが、今年度はキーボード入力にした点である。なるべく速く、提示された画面を理解してキーボードで反応するという課題デザインがテレビゲームの施行状態と類似していたからでないだろうか。テレビゲーム遂行中の脳活動は減少するという報告が多くの研究でなされている。次年度は、この失敗を踏まえ、音声入力プログラムを作成し音声入力とキー入力のちがいによる脳活動の違いについて検討していく予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1)菊地千一郎ら.rTMS治療経過中の前頭前野活動変化-NIRSを用いた検討 精神神経学雑誌 (0033-2658)2015
特別 PageS328(2015.06) 第111回大会 福岡
2)菊地千一郎ら.rTMS治療経過中の前頭前野活動変化-NIRSを用いた検討 第17会日本ヒト脳機能マッピング
学会抄録集 (2015.07)大阪
3)菊地千一郎ら.ウェアラブルNIRSを用いた簡便で反復計測に頑健な脳機能検査法の開発 第46回日本臨床神
経生理学会学術集会 (2016.10)福島
4)Kikuchi et al. Development of cerebral activity examination that is simple and robust against repetition
by using wearable NIRS (2017.10) Berlin,
5)Nishida et al. Night Duty and Decreased Brain Activity of Medical Residents: a Wearable Optical
Topography Study. Medical Education Online, on submission

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

平成29年度群馬大学医学部保健学科卒業研究発表会 NIRSを用いた簡便で親しみやすく頑健な脳機能検査法の開発 平成29年7月11日 群馬大学医学部保健学科棟 大会議室 参加者数 50名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

土屋 賢仕

群馬大学大学院保健学研究科

外里 冨佐江

群馬大学大学院保健学研究科

三分一 史和

統計数理研究所