平成192007)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

19−共研−13

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

2

研究課題名

1/fゆらぎによる計算万能セルオートマトンの探索

フリガナ

代表者氏名

ニナガワ シゲル

蜷川 繁

ローマ字

Ninagawa Shigeru

所属機関

金沢工業大学

所属部局

工学部情報工学科

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果の概要

 ライフゲームは2次元2状態9近傍セルオートマトンの1種であり,セル平面上で計算機が構成できることが知られている.このように計算万能性を備えたセルオートマトンを計算万能セルオートマトンとよび,類似のセルオートマトンのうち,ライフゲームのみが1/fゆらぎを示す.また,単純セルオートマトンとよばれる1次元2状態3近傍セルオートマトンの中でルール110と呼ばれるセルオートマトンがもっとも長期にわたり1/fゆらぎを示すことが示された.いっぽうルール110は計算万能であることが証明されている.これらのことから,セルオートマトンにおける計算万能性と1/fゆらぎとの間に何らかの関連性があると予想される.本研究では,計算万能セルオートマトンを発見することをめざして,2次元3状態9近傍セルオートマトンにおいて1/fゆらぎを示すものを探索する.探索の対象となるセルオートマトンは,全部で318=約2.59×1064個あるため,全数探索は現実的ではない.そこで1/fゆらぎという特徴に注目し,遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて1/fゆらぎ型2次元セルオートマトンを探索する.
 対象とする2次元3状態セルオートマトンの状態遷移規則は134桁の3進数列で表現することができるので,これを遺伝子型とし,テーブルウォークスルー法と呼ばれる方法を用いてランダムに生成する.こうして得られた各遷移規則に対して縦×横=100×100のランダムな初期様相から8000ステップにわたって状態遷移を行わせ,そこからパワースペクトルを求める.さらに最小2乗法によって,パワースペクトルの傾きbと残差平方和σ2を求め,それらを用いて適合度を求める.こうしてパワースペクトルが1/fゆらぎに近いものほど高い適合度をもつようになる.GA操作としてはルーレット選択方式,一様交叉,突然変異を用い,交叉確率は0.6,突然変異確率は0.03としている.実験は集団の平均適合度に変化が見られなくなるまで繰り返す.
 探索に際しては一度パワースペクトルを計算したルールはデータべースに登録しておき,重複して計算することのないようにして,探索の手間を省いている.また,初期集団の生成に際しては1024ステップでパワースペクトルを求め,傾きが−0.3以下の比較的有望なルールだけを選抜して,使用している
 統計数理研のスーパーコンピュータを利用することにより,2007年4月から2008年3月の1年間に約 119,000 種類のルールの適合度を計算することができた.現在のところ,探索は終了していないため,引き続き探索を続ける予定である.