昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−80

専門分類

7

研究課題名

情報量統計学を用いた新しい種雄牛評価手法についての研究

フリガナ

代表者氏名

ワダ ヤスヒコ

和田 康彦

ローマ字

所属機関

農林水産省畜産試験場

所属部局

育種部

職  名

主任研究官

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

種雄牛の遺伝的な能力を評価する手法としてBLUP法が広く用いられている。しかし,現実に評価をしようとする場合には,わが国の乳用牛や肉用牛に適したモデルをいかにして求めるかが問題となる。本研究の目的は情報量統計学の観点からBLUP法を見直して,モデル選択手法をも含めた新しい種雄牛評価手法を開発することである。


まず共同でHendersonのBLUP法の基本モデルをベイズモデルに書き直して,ベイズの定理と赤池の情報量統計学の理論にもとづいて,母数効果の最良線形不偏推定値,変量効果の最良線形不偏予測値,誤差分散の最尤推定値,ベイズ型尤度および赤池のベイズ型情報量規準を求める式を導きだした。
次にこれらの諸量を計算するコンピュータプログラムをFortran言語で開発した。そしてこのプログラムを用いて今回開発した手法を利用するのに必要な記憶容量および計算時間についての予測を,テストランによる結果を踏まえて実施した。
さらに今回開発した手法の有効性を検討するためシミュレーション実験を実施した。まず,日本におけるホルスタイン種の初産305日補正乳量のフィールドデータを前提とし,種雄牛間の血縁関係を考慮したシミュレーションデータを乱数により発生させるプログラムを開発した。
そしてこのプログラムによって発生させたシミュレーションデータを先に述べた種雄牛評価のためのプログラムで統計処理を行った。その時,シミュレーションデータ発生時のモデルと同一のモデルの他に,母数効果を1つまたは2つはずしたモデルと,変量効果の事前分布モデルのうちで,分散比を変化させたモデルと種雄牛間の血縁関係を考慮したモデルと考慮しなかったモデルなど,計13種のモデルで分析した。
その結果,ABICはシミュレーションデータ発生時のモデル(真のモデル)で最も低い値を示し,真の種雄牛効果の値と推定値の間の相関が低くなるほどABICとは高い値を示すことが明らかとなった。この結果よりABICは種雄牛評価においても有効なモデル選択の規準となりうることが明らかとなった。
さらに今回開発した手法を黒毛和種去勢牛のフィールドデータに対して試みてみた。
その結果,肥育農家の効果をモデルに組み入れられない場合でも屠殺時日齢区分を組み入れることによってある程度評価が可能なこと,種雄牛間の血縁関係を事前分布において考慮しても大きな改善がはかれないことが明らかとなった。しかしフィールドデータの場合,要因間の直交性が仮定できないなど種々の問題点があり,今後さらにモデルを検討する必要があると考えられた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

和田康彦,柏木宣久(1988),「種雄牛評価におけるABICを用いたモデル選択法」,第7回電子計算機利用研究発表会
和田康彦,柏木宣久(1989),「ABICを用いた黒毛和種去勢牛のフィールドデータによる種雄牛評価モデルの検討」,第81回日本畜産学会大会
Wada,Y.and N.Kashiwagi(1989),“A New Model Selection Method of Mixed Linear Models with Akaike’s Theory in Sire Evaluation.”,The 6th International Congress of SABRAO.(発表予定1989.8)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

まず,BLUP法の基本モデルを事前分布モデルとデータ分布モデルからなるベイズモデルに直して,ベイズの定理とベイズ型尤度関数に基づく新手法を開発する。このためには,情報量統計学の手法が必須であり,この分野の専門家の協力が必要であり,統計数理研究所と共同研究を実施することは,必要不可欠のことである。
次に分析のためのプログラムを作成し,わが国のホルスタイン種のフィールドデータを念頭においたシュミレーションを実施してその有効性を検討する。さらに,実際のフィールドデータについて種々のモデルの中から最適なモデルを検索する。この段階においても理論と現実の間のフィードバックが必要であり,統計数理研究所と共同研究する意義は大きい。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

柏木 宣久

統計数理研究所