平成262014)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

26−共研−8

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

2

研究課題名

ハイブリッドモンテカルロ法による多変量SVモデルの推定

フリガナ

代表者氏名

タカイシ テツヤ

高石 哲弥

ローマ字

Takaishi Tetsuya

所属機関

広島経済大学

所属部局

経済学部教養教育

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

確率的ボラティリティ変動モデルのベイズ推定をハイブリッドモンテカルロ法によって実行する方法の開発を行った。ハイブリッドモンテカルロ法を利用する利点は、マルコフ連鎖モンテカルロ法を実行するときに、すべての変数を一度に更新できることである。特に確率的ボラティリティ変動モデルは多数のボラティリティ変数を更新する必要があるが、ローカルに1つ1つ更新した場合、サンプリングされた変数間の相関が大きくなることが知られているので、ハイブリッドモンテカルロ法のように1度に更新することができると変数間の相関が小さくなること期待される。実際に、メトロポリス法と比較するとハイブリッドモンテカルロ法からサンプリングされた変数の方が、相関が非常に小さくなることが分かった。
確率的ボラティリティ変動モデルにはいろいろなバリエーションがあるが、本研究では、実現ボラティリティをモデルに取り入れた実現確率的ボラティリティ変動モデルを利用した。ハイブリッドモンテカルロ法はその中で分子動力学シミュレーションを利用している。分子動力学シミュレーションはハミルトン方程式を近似的に適切な積分法を用いて実行され、標準的な手法では積分法としてリープフロッグ法が用いられている。本研究では、改善された積分法を用いて分子動力学シミュレーションを実行した。改善された積分法は近似による誤差が少なく、かつ計算量も多くないという利点を持っており、リープフロッグ法と比較したところ全体の効率が大きくなることが分かった。
ハイブリッドモンテカルロ法の利点は、すべての変数を一度に更新できることであったが、このことはすべての変数を並列に計算することができることを表している。そこで、GPGPU計算によってパソコンでの並列計算を実行し、CPU計算との比較を行った。GPGPUプログラムはCUDAとOpenACCで開発した。OpenACCはディレクティブを入れることによって簡単にGPU計算を可能にする。両方の計算速度を比較すると、適切なディレクティブ挿入によって、計算速度はほぼ同じになることが分かった。本研究で用いたパソコンハード:CPU(Intel i7-4770 3.4GHz)とGPU(GTX 760)、による比較では、GPGPU計算の方が最大15倍程度高速になるという結果が得られた。
これまでの結果は、1時系列に対する結果であったが、今後は複数時系列に対するモデルの推定を行う予定である。