平成282016)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

28−共研−2007

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

データ同化によるプラズマ圏時空間変動の推定手法の開発

フリガナ

代表者氏名

ナカノ シンヤ

中野 慎也

ローマ字

Nakano Shin'ya

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

28千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

電離圏は,電離した気体が中性の気体と共存する地上高度80kmから1000km程度の領域である.電離圏の状態は太陽活動や下層大気の影響により,絶え間なく変化している.こうした電離圏の変動は電波通信等に大きな影響を与える可能性があるため,電離圏の状態の把握,予測は重要な課題となっている.そこで現在,電離圏の状態を常時把握できるようにするために,イオノゾンデ観測や,大気光観測,GPS衛星などの測位衛星を用いた全電子数観測など,様々な手段による観測が行われている.特に,全電子数観測は,日本上空や米国上空などにおいて空間的に高密度な観測網が展開されており,電離圏の電子密度分布などについての詳細な情報が常時取得できるようになってきている.
一方,電離圏の上には,無視できない量のイオン・電子が分布するプラズマ圏と呼ばれる領域がある.プラズマ圏は,GPSなどの測位衛星による全電子数観測において無視できない効果を持つほか,放射線帯と呼ばれる非常に高いエネルギー粒子が分布する領域の発達,減衰に重要な役割を果たしていると考えられている.そのため,プラズマ圏の刻々の変動を把握,予測することも,近年重要になりつつある.プラズマ圏のイオン・電子分布については,種々の電波観測や地上磁場観測を活用することで空間構造についての情報が得られる他,測位衛星による全電子数観測のデータや極端紫外光による光学観測などから,ある程度の情報を得ることができる.しかし,こうした様々な観測データは十分に活用されていないのが現状である.
本研究では,このプラズマ圏に焦点を当て,測位衛星の全電子数観測データや国際宇宙ステーションからの光学撮像観測(ISS-IMAP; Ionosphere, Mesosphere, upper Atmosphere, and Plasmasphere mapping)のデータを活用して,プラズマ圏のグローバルな時空間変動を推定する手法の開発を目指している.測位衛星の受信点は地上に多数分布しており,多数の点の全電子数データを合わせることで,電子密度空間分布に関する広範囲の情報を得ることができる.全電子数データには電離圏の寄与が無視できないが,少なくとも夜間であれば経験的モデルから一定の精度で推定できるため,電離圏の効果を除いたプラズマ圏電子密度に関する情報が得られる.一方,国際宇宙ステーションからの撮像観測では,カメラからの限られた視野からの情報しか得られないが,全電子数データでは分からないヘリウムイオンや酸素イオンの量に関する情報が得られる.このような情報を統合することで,プラズマ圏の変動を詳細に知ることができると考えられる.本年度は,プラズマ圏の時間発展のモデリングに焦点を当て,データ同化を行ってプラズマ圏のプラズマ密度分布の時空間変動を推定する手法のプロトタイプ開発を進めた.光学観測データの同化を行う部分についてはプログラムができあがり,人工データを用いて有効性を検討した.また,プラズマ圏プラズマ密度分布の推定時に問題となる非線型性を取り扱うために,カーネル法を組み込んだアンサンブルカルマンフィルタを考え,その有効性の検討も進めた.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

中野慎也: 内部磁気圏データ同化プロダクト整備に向けて, 第3回「太陽地球環境データ解析に基づく超高層大気の空間・時間変動の解明」,立川市,19 Oct 2017.
中野慎也, Brandt, P., Fok, M.: プラズマ圏?リングカレント統合データ同化システム開発の現状, 研究集会「宇宙環境の理解に向けての統計数理的アプローチ」,立川市,21 Oct 2017.
Nakano, S., Brandt, P. and Fok, M.: Experimental study of global imaging data assimilation for reproducing the inner magnetosphere, The 3rd RIKEN International Symposium on Data Assimilation / 7th Annual Japanese Data Assimilation Workshop, Kobe, 27 Feb 2017.
Nakano, S.: Kernel regression approach for ensemble Kalman filters, The 3rd RIKEN International Symposium on Data Assimilation / 7th Annual Japanese Data Assimilation Workshop, Kobe, 27 Feb 2017.
中野慎也, Brandt, P., Fok, M.: データ同化によるプラズマ圏-リングカレントの再現に向けて,研究集会「プラズマ圏の観測とモデリング」, 寝屋川市, 6 Mar 2017.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

齊藤 昭則

京都大学

穂積 裕太

京都大学