平成202008)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

20−共研−2032

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

自然災害リスクを考慮した確率動的計画法による多期間最適林分管理モデルの構築

フリガナ

代表者氏名

ヨシモト アツシ

吉本 敦

ローマ字

Yoshimoto, Atsushi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

数理・推論研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年,持続的な森林資源管理が重視される一方,欧米の大規模な山火事など,いわゆる自然災害の森林に及ぼす影響が懸念されている.山火事は一見,単発的で一時的なものに見えるが,潜在的被害の程度及びその発生確率は多期間にわたる管理(火種管理)行為に依存する.従って,山火事の被害リスクを軽減するためには,一度の管理行為を制御するのではなく,多期間に渡り適切な管理行為を森林の状態に応じて決定していく必要がある.本研究では上記のような山火事による被害リスクを考慮し,多期間に渡る管理行為を最適化するランドスケープ管理モデルを構築した.そして最適化モデルから導出された最適ランドスケープ管理パターンの分析を行い,自然災害リスク下の林分における最適な管理計画について検討した.本研究ではリスクを考慮できるよう確率動的最適化モデルの適用を試みた.また,リスクに対しては,これまでの山火事災害事例情報に基づいてシミュレーションモデルを構築した.本研究では,まず,仮想的なランドスケープによるシミュレーションを行い,その結果を踏まえ実際のランドスケープ(対象試験地はオレゴン州立大学の演習林の一部)によるシミュレーションを行った. シミュレーション結果の分析から次の知見を得た.
1. 慣習的な管理では,各林分に対して,例えば,7年ごとなど決まった年数ごとに火種管理を施してきたが,シミュレーション結果から各林分に対する管理時期が潜在的な火災拡散パターンとそれによる被害影響に依存し,計画期間を通して管理のインターバル年数は変動することが示唆された.
2. 管理に対する予算制約のもと,管理者は計画期間を通して,効率的に管理の空間配置をシフトさせる.
これらのことから,山火事など空間的プロセスで拡散するような自然災害を考慮する場合,林分における最適な管理の探索は森林ランドスケープレベルのモデルを用いて行う必要があることが示唆された.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表:
木島真志「統合的空間モデルを用いた野生動物生息地保全と木材生産のトレードオフ分析:オレゴン州における北マダラフクロウ生息地保全のケーススタディ」環境情報科学論文集22: 61-66, 2008
木島真志「森林火災リスク軽減と森林保全:統合的空間モデルによる分析」第36回環境システム研究論文発表会講演集: 287-292,2008
木島真志・吉本 敦・嘉戸昭夫「富山県シルブの森成長モデルを用いた間伐手法・強度・時期の最適化」森林資源管理と数理モデルVol.8: 121-136,2009

学会発表:
Konoshima, M. and Yoshimoto, A. “An economic analysis of joint production of timber and bio-energy source through the optimal thinning regime by a dynamic programming model” CORS/Optimization Days 2008 joint conference, Université Laval, Quebec City, Canada (May, 2008)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

木島 真志

東北大学