平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−77

専門分類

7

研究課題名

最尤法によるさけます類系群識別法の研究

フリガナ

代表者氏名

ヒラマツ カズヒコ

平松 一彦

ローマ字

所属機関

遠洋水産研究所

所属部局

職  名

研究員

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

北太平洋におけるさけます類は,日本,ソ連,米国,カナダのいずれかの国の河川を起源とする複数の系統群が混合している。いわゆる母川国主義が国際的に定着した現在,各系統群が北太平洋にどのように分布し,混合しているのかを解明する必要がある。


1.系群識別の方法論に関する研究
系群識別は系群による形質の違いを利用して,起源が未知のサンプルの組成を推定する方法である。起源のわかつているサンプルを基準サンプル,起源未知のものを混合サンプルという。最尤法では混合サンプルは基準サンプルの重ね合わせとみなし,各系群の比率を最尤推定する。
最尤法を用いた系群識別は既にアメリカ,カナダ等で行なわれているため,まずこれら既存の方法のレビューを行った。その結果,基本的な方法論はある程度確立されているが,推定値の誤差の評価に関しては,本来は基準・混合両サンプルの誤差について考慮すベきであるが,基準サンプルの誤差までとりこんだ適切な方法が無いことがわかった。そこで基準サンプル・混合サンプルの両方の誤差をとりこんだ推定値の分散の評価式を新たに導いた。
2.実際のデータの解析
1981年に北太平洋の中央部で漁獲されたシロザケを,同年に各国の母川で捕獲されたシロザケのデータを用いて,系群識別を実際におこなった。その結果推定値が負になることがあること,用いる形質によって識別結果が異なることがわかった。前者については束縛条件を入れることにより解決でき,標識再捕による知見とある程度一致する結果がえられた。後者の問題については,幾つかの形質を組合せて用いることと,モデルの前提条件のチエックが必要と考えられる。これらの点,及び上述の分散の評価式の実際の適用については今後の課題である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Hiramatsu,K.and H.Kishino.1989. Stock Identification by Maximum Likelihood Method:Derivation of Variance Estimator.(Document submitted to the Annual Meeting of the International North Pacific Fisheries Commission,Seattle,U.S.A.,October 1989.)13p.


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

系群識別のひとつの方法として,各系統群の鱗相形質の違いをもとにした判別方法がある。従来は判別関数による判別が行われてきたが,個体毎の判別となり他個体の情報が生かされない,推定誤差が不明である等の欠点があった。これらの欠点を補うより適した方法として最尤法を用いた判別方法が考えられる。特に最尤法とAIC,及び,ブートストラツプ法等を組合せることにより,より正確なモデルの選択,推定精度の評価を行うことが期待される。また鱗相形質以外の情報も用いて二相サンプリングによる方法の検討も行なう。これらの研究の推進のためには統計学の専門家との共同研究が不可欠である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石田 行正

遠洋水産研究所

柏木 宣久

統計数理研究所

岸野 洋久

東京大学