平成192007)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

19−共研−16

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

政策の感染症拡大に与える影響の評価

フリガナ

代表者氏名

マツダ シンタロウ

松田 慎太郎

ローマ字

Matauda Shintaro

所属機関

筑波大学

所属部局

工学システム学類

職  名

4年

 

 

研究目的と成果の概要

 パンデミックインフルエンザが起こった時に、どのような対策がどのような効果をもたらすかをシミュレーションによって評価し、政策に関して提言を行う。実際には電車のある都市部において個人をエージェントとした個体ベースモデルを用いてモデル化し、感染の様子を確率によって記述する。以下にモデルの概要を示す。
 モデルの最小単位をなすエージェントは会社等に通勤する大人、家にいる大人、学校に通う子供、幼稚園に通う子供、デイケア施設に通う老人の5種類を想定する。それぞれは感染チャンスの多さや感染のしやすさの違い等で差別化される。また会社等に通勤する大人は自宅と通勤先の間を徒歩で行くより電車で行く方が早い場合、電車を用いる。電車を用いた移動、電車内の感染といった電車の影響を直接受けるのはこの通勤する大人のみである。
 これらのエージェントは数人集まり世帯を作る。世帯の構成比は日本における家族構成の統計データを用いた。これらの世帯を二次元に配置していき、それを都市とする。今回のシミュレーションでは600x600世帯、人口約90万人の都市を想定した。
 この都市の中心付近に新規感染者がいると仮定し、感染の推移を調べた。想定する感染経路は家庭内感染、社会的集団内感染(社内感染、学校内感染等)、電車内感染、地理的に近い世帯間の感染である。
 シミュレーション内の感染を抑制すると思われる政策をモデルに組み込み、その影響を評価する。想定する政策は電車停止、社会的集団(施設)閉鎖(会社、学校、等を閉鎖する)、就床率の変化、というものである。
 電車停止や社会的集団の閉鎖は人口における就床者の割合がある一定値に達したら実行される。就床率の変化は、感染症にかかった者が出勤や通学をせずに就床する確率を変化させるものである。体調に変化を感じたらすぐ休むべきだという広告等に相当する。
 以上の政策を評価した結果、電車停止はあまり効果がなかったのに対して社会的集団の閉鎖はかなりのものであり、早期に閉鎖すればさらなる効果がある事が分かった。就床率は高ければ高い程最終感染者が減り、さらに感染ピークが遅れる事が分かった。これは他の政策では現れなかった事である。感染ピークが遅れればそれだけワクチン等を確保する時間が出来るため、有効な対策であると言える。