平成222010)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

22−共研−2033

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

グローバル化する環境政治

フリガナ

代表者氏名

カタノ ヨウヘイ

片野 洋平

ローマ字

KATANO YOHEI

所属機関

鳥取大学

所属部局

生物資源環境学科

職  名

助教

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

環境問題はその性質からしてグローバル、かつ政府や諸機関のみでなく個人のライフスタイルを巻き込むものであり、その分析は国際的な世論や市民運動を抜きにしては成立しにくい。一方では、企業行動や政策決定過程に対し、どれほどの影響力を世論や市民運動の活動等が持ちえるのかについて、系統だった先行研究はこの分野にて少ない。またさらには、世論形成の上で重要な役割を持つ事が容易に想定されるマスメディアに関しては、これまで一般論としての知見は相当の蓄積があるわけだが、環境問題やそれに関係する市民運動に特化すると有意義で総合的な先行研究が多いとも言えない。そのため、本研究では、特に環境問題、そして市民運動の活動や影響とそれに関する世論の理解や解釈をつなぐ接点としての、メディアの役割に注目することにした。
当研究が探索的な要素を多く含む事もあり、テーマや背後の理論を共通化させるよりは、まずは手法を新聞記事のテキストマイニングと統一し、その後の分析過程から得られる知見を発展させていく、という考え方を採用した。具体的には、まず昨年度、環境運動や保護団体、また環境政策や市民の社会参加意識の変遷といった関連するテーマを自由に選択し、その後それらにつき1970年代以降に日本のいくつかの主要新聞にて掲載された記事を集め、テキストマイニングにかける、という流れで作業した。今年度については昨年度の成果をより発展、洗練させるべく、各自追加の新聞データを収集することやより高度な統計的分析を試みるよう努めた。そのうちの具現化された成果の一つが、次ページに掲載された藤田(2010)による学会発表である。片野、二階堂については3月の震災による環境の悪化や物品の破損のため当初の予定より作業が滞っているが、主に昨年度はカバーできずに終わった新聞データの拡充を急いでいる。早いうちでの学会発表や投稿論文といった成果につながる事を期待している。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

2009年度既に公表された成果(当該共同研究が2年目であるため):

片野洋平・藤田泰昌・二階堂晃祐・松本渉 (2010) 「グローバル化する環境政治」 統計数理研究所研究リポート253

2010年度に公表された成果

2010年10月 日本国際政治学会(札幌)
         「日本国内の国際政治意識の変容?テキストマイニングによる多面的検証」
上記発表の概要:
藤田は2009年度に行った分析を発展させる形で、日本社会の国際政治意識の変遷を捉えることを目的とした研究を行った。「外交を議論する際、何に焦点を当ててきたか」を明らかにすることで、この問いにアプローチした。具体的には、1980年代後半から2009年末までの朝日と読売の社説をデータとして採用し、環境を含む様々なイシュー、主体、地域などへの言及頻度の変遷の分析を試みた。この過程で、テキストマイニングによって様々なワードの言及頻度を抽出・整理した後、主に数量化?類による計量分析を行った。
 分析の結果、NGOという新たな主体や環境というイシューに対する言及頻度に増加傾向は認められなかった。他方、国際機構に関する言及は増大傾向にあるが、同時にそれは大国とセットで論じられる傾向の増大などが確認できた。こうした傾向と実施の社説での記述とを照らし合わせた考察から、従来のいわゆる国連第一主義という日本の理想主義的な対外意識は、大国との関係を踏まえた上で国際機構を論じる必要を意識した対外意識へと変化したことが読み取れた。
 さらに上述の変化のタイミングからは、日本社会の意識変化を説明する要因として、国際環境の変化(だけ)ではなく、国内政治制度の変化が重要であることが示唆された。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

1. 2010年12月22日(水)午後2時から 上智大学図書館会議室にて 3名参加
  各自の追加分析結果の報告と確認、今後のデータ収集方法の検討
  (注意:上記研究会は各自別件での大学訪問を兼ねていたため、当共同研究の旅費は使用していない)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

二階堂 晃祐

明治学院大学

藤田 泰昌

上智大学

吉野 諒三

統計数理研究所