昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−23

専門分類

3

研究課題名

X線星の時間変動の解析

フリガナ

代表者氏名

オガワハラ ヨシアキ

小川原 嘉明

ローマ字

所属機関

宇宙科学研究所

所属部局

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

X線星はミリ秒から数日あるいは数か月までの広い時間尺度で時間変動を示すことが知られており,これらはX線星を理解する上で重要な手掛かりである。本研究は,我が国のX線天文衛星「てんま」やASTRO−C等の観測データを解析し,時間変動の新しい性質を探すことを目的とする。


宇宙X線源からの,X線は,様々な時間尺度で強度変化を示す。その時間変動の性質を調べることは,X線源の理解においてたいへん重要なことである。宇宙科学研究所が1987年2月5日に打ち上げた我が国3番目のX線天文衛星『ぎんが』は,様々なX線源の時間変動を1ミリ秒までの時間分解能で観測することを大きな目的としている。
この時間変動の解析においては,観測上避けられない問題が生じる。
本共同研究は,統計数理研究所において開発された方法を応用し,それらの問題を解決することを目的としたものである。以下に,実際に行ったデータ解析と,その進行状況について報告する。
(1)比較的長い(数分以上の)周期の周期性の検出
このようなX線データ処理において問題になるのは,
1.X線検出における量子ノイズ
2.X線源自身のもつランダムな変動
3.衛星の軌道運動により起きる半周期的な観測の欠落
である。このため,まず,ARモデルによるパワー推定を導入した。
この方法のテストケースとして,軌道運動にともなうバックグラウンドカウントの変動解析を行った。この結果,通常のパワースペクトル解析では検出されなかったバックグラウンドの周期変動がきれいに検出された。
次に,NGC6624というX線源の解析を行った。このX線源からは約11分の周期性が示唆されているが,強いランダムな変動を伴う上に,衛星の軌道運動によりデータが約20分程度の長さに毎に途切れるため,通常のパワースペクトルの方法では検出しにくい。このため,パワースペクトルの推定にまずARモデルの適応を試みた。しかしながら,この方法では,有意な結果は得られなかった。ノイズを考慮した,ARモデル,ARMAモデルの適応を現在試みているところである。
(2)速い時間変動の解析
X線源には,そのパワースペクトルが,べき関数型の連続スペクトルや,拡がったピーク状のスペクトルとなるものがある。このような,速い時間尺度の変動を,1.の量子ノイズから分離することを,ノイズを考慮した,ARおよび,ARMAモデルにより試みている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

堂谷忠靖他
ARモデルを利用した周期性探し。
宇宙圏研究会・宇宙科学研究所 1987年11月


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

X線星のなかでもブラックホールの候補とされるCygX−1,GX339−4等のX線源は,特に不規則で速く(〜1msec),大きな時間変動を示す。これらの時間変動は,これまで主に自己相関関数や,変動関数を使って調べられてきたが,その物理的解釈に致るような結果は得られていない。一方,統計数理研究所のグループでは,新しい時間変動の解析方法を開発しており,この方法は概にCyg−1の「てんま」衛星のデータに適応され,それが有効であることが示されている。またこの2日には,時間変動の観測を主目的の一つとする新しいX線天文衛星が打ち上げられ,これまでにない良質のデータが得られることが期待される。したがって,これらのデータの共同研究を行うことにより,新しい成果が得られることが大いに期待される。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

赤池 弘次

統計数理研究所

大橋 隆哉

東京大学

小田 稔

理化学研究所

北川 源四郎

統計数理研究所

田村 義保

統計数理研究所

牧島 一夫

東京大学

満田 和久

宇宙科学研究所