平成202008)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

20−共研−2038

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

8

研究課題名

残留性化学物質データの組織化と発生源解析 

フリガナ

代表者氏名

ハシモト シュンジ

橋本 俊次

ローマ字

Hashimoto, Shunji

所属機関

国立環境研究所

所属部局

化学環境研究領域

職  名

主任研究員

配分経費

研究費

40千円

旅 費

450千円

研究参加者数

43 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

ダイオキシン類をはじめとする残留性化学物質は、高い毒性と長期にわたる残留蓄積性から、ヒトや環境への有害影響が危惧されている。このため、国及び地方公共団体は、ダイオキシン類対策特別措置法、PCB廃棄物適正処理推進特別措置法などに基づいた排出量削減対策を実施している。
本研究では、これまで水田土壌や大気等におけるダイオキシン類の挙動把握や魚類への影響を調べるとともにサンプリング法やデータ解析手法の最適化及び効率化を進め、ダイオキシン類の主要な発生源の及ぼす地域的特性について明らかにしてきた。一方で、残留性化学物質の一つであるPCBは10種の同族体、209種の異性体からなり、データの収集にはダイオキシン類(異性体:222種)と同様に分析に高度な技術と多大な時間、膨大なコストが必要とされるため、環境中の挙動や発生源寄与などについて、充分な科学的知見が得られていない。また、環境中や特定の反応過程における組成パターンの変化や未把握発生源の影響についても必ずしも明らかとなっていなかった。そこで本研究は、国内各地域における大気、水、土壌、底質等各環境媒体とそれらに影響を及ぼす主要な発生源のダイオキシン類及びPCBの異性体・同族体プロフィール収集等を目的とした。また、併せてダイオキシン類、PCB発生源解明のためのChemical Mass Balance (CMB)法の整備を進め、更にデータ解析によって推定される発生源寄与率やダイオキシン類等の挙動に基づいた適切な発生源対策の構築を目的とした。
(本年度の成果)
 本年度は、ダイオキシン類やPCBの異性体・同族体分布状況の把握を更に推し進めると同時に、異性体情報を正しく得るための分析上の問題点を幾つか明らかにし、その組成変化等の検証及び統計的手法を用いた発生源解析等を主要課題として研究を実施した。
<ダイオキシン類の未解明発生源の把握>
 ダイオキシン汚染源の一つとして、黒鉛電極による食塩電解プロセスに注目し、電解操作を行った際に生成するダイオキシン類の検証を行い、実際の汚染底質や土壌との比較を行った。
<発生源解析のための化学分析上の問題点の把握>
 廃油中のダイオキシン類分析におけるDMSO処理の異性体組成や回収率低下に与える影響を、実験により確認した。液液処理よりも固相型DMSO処理の方が回収率が安定し、良い結果が得られることが分かった。
<ダイオキシン類やPCBの組成変化等の検証>
一般大気中の1〜10塩素化PCBの異性体組成の季節変化を、大気捕集部(フィルター、PUF、活性炭フェルト)からの回収率と検出濃度により見積もり、大気中のPCB同族体組成と気温との関係を明らかにした。
<統計的手法を用いた発生源解析等>
処理施設周辺におけるPCB濃度のモニタリング及び関数関係解析によるCMB法と米国環境保護局の標準的方法であるCMB8との比較、指標異性体を用いたダイオキシン類汚染源寄与率の概算手法とベイズ型重回帰によるCMB法の比較、水生昆虫を用いたPCB濃度及び発生源推定の最適化を行った。また、CMB法適用時における推定精度と使用データとの関係の整理、未確認発生源対応のCMB法活用など解析法の最適化を進めた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・Mizuki Sakai, Nobuyasu Seike, Jun Kobayashi, Hideo Kajihara, Yukio Takahashi(2008):Mass balance and long-term fate of PCDD/Fs in a lagoon sediment and paddy soil, Niigata, Japan,Environmental Pollution,156(3)760-768
・村山等、鈴木貴博、種岡 裕、大野勝之、茨木 剛、杉原 誠、旗本尚樹、渋谷信雄、橋本俊次、柏木宣久 (2008.6):佐渡真野湾で採取した底質コアサンプルによるダイオキシンの歴史的変遷,環境化学討論会,390-391
・吉澤 正 山縣 晋* 宇野健一:下手賀沼におけるダイオキシン類汚染調査−底質調査結果−千葉県環境研究センター年報,第7号,216-220 (2009)
・山縣 晋 吉澤 正 宇野健一:下手賀沼におけるダイオキシン類汚染機構解明調査(2)−鉛直調査−千葉県環境研究センター年報,第7号,108-109 (2009)
・東野和雄、阿部圭恵、山本央、柏木宣久、佐々木裕子:土壌中におけるPCBの挙動について、東京都環境科学研究所年報2008、24-29
・山本央、東野和雄、橋本俊次、柏木宣久、嶽盛公昭、高菅卓三、佐々木裕子:食塩電解過程から生成するダイオキシン類について、東京都環境科学研究所年報2008、30-37
・Yamamoto.T,Higashino.K,Sasaki.Y: DIOXIN FORMATION DURING A FORMER INDUSTRIAL PROCESS AND SEDIMENT CHLORINATION、PERSISTENT ORGANIC POLLUTANTS(POPS) RESEARCH IN ASIA 483-488
・Yamamoto.T,Higashino.K,Sasaki.Y: DIOXIN FORMATION IN BRINE ELECTROLYSIS PROCESS USING GRAPHITE ELECTRODE、国際ダイオキシン会議2008(2008.8)
・山本央、東野和雄、橋本俊次、柏木宣久、嶽盛公昭、高菅卓三、佐々木裕子:黒鉛電極を用いた食塩電解過程から生成するダイオキシン類について、環境化学討論会(2008.6)、32-33
・東野和雄、阿部圭恵、山本央、柏木宣久、佐々木裕子:土壌中におけるPCBの挙動について、環境化学討論会(2008.6)、460-461

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

残留性化学物質データの組織化と発生源解析、平成21年1月9日、統計数理研究所、24名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

姉崎 克典

北海道環境科学研究センター

安藤 晴夫

(財)東京都環境整備公社 東京都環境科学研究所

茨木 剛

新潟県保健環境科学研究所

岩切 良次

環境省環境調査研究所

岩澤 理奈

宮城県保健環境センター

岩村 幸美

北九州市立大学

大高 広明

製品評価技術基盤機構

大塚 宣寿

埼玉県環境科学国際センター

大塚 英幸

北海道環境科学研究センター

大野 勝之

新潟県保健環境科学研究所

大原 俊彦

広島県立総合技術研究所 保健環境センター

岡本 拓

広島県立総合技術研究所 保健環境センター

小澤 秀明

長野県衛生公害研究所

柏木 宣久

統計数理研究所

門上 希和夫

北九州市立大学

桜井 健郎

国立環境研究所

佐々木 裕子

(財)東京都環境整備公社 東京都環境科学研究所

清水 明

千葉県環境研究センター

陣矢 大助

北九州市立大学

菅谷 和寿

茨城県霞ヶ浦環境科学センター

杉原 誠

新潟県保健環境科学研究所

清家 伸康

農業環境技術研究所

高島 輝男

岐阜県保健環境研究所

種岡 裕

新潟県保健環境科学研究所

友部 正志

茨城県霞ヶ浦環境科学センター

永洞 真一郎

北海道環境科学研究センター

中村 朋之

宮城県保健環境センター

西野 貴裕

(財)東京都環境整備公社 東京都環境科学研究所

半野 勝正

千葉県環境研究センター

日浦 盛夫

広島県立総合技術研究所 保健環境センター

東野 和雄

(財)東京都環境整備公社 東京都環境科学研究所

菱沼 早樹子

宮城県保健環境センター

星 純也

(財)東京都環境整備公社 東京都環境科学研究所

細野 繁雄

埼玉県環境科学国際センター

堀井 勇一

埼玉県環境科学国際センター

村山 等

新潟県保健環境科学研究所

安田 裕

岐阜県保健環境研究所

山縣 晋

千葉県環境研究センター

山口 勝透

北海道環境科学研究センター

山本 央

(財)東京都環境整備公社 東京都環境科学研究所

吉岡 秀俊

(財)東京都環境整備公社 東京都環境科学研究所

吉澤 正

千葉県環境研究センター