平成212009)年度 共同研究集会実施報告書

 

課題番号

21−共研−5002

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

4

研究課題名

乱流の統計理論とその応用

フリガナ

代表者氏名

ヨコイ ノブミツ

横井 喜充

ローマ字

YOKOI, Nobumitsu

所属機関

東京大学

所属部局

生産技術研究所 基礎系部門

職  名

助教

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

35 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

[研究の目的]乱流はきわめて身近な現象だが,依然,古典力学の未解決の難問として残っている.乱流解析のためには,非線型力学や統計理論の知見を結集する必要がある.乱流の大きな特徴のひとつにその予測不可能性がある.発展の各ステップは,例えばNavier=Stokes方程式など,決定論的な方程式に従う.しかし,方程式の非線型性のため,結果は初期値にきわめて敏感に依存し,誤差程度のほんの小さな差が大きな違いをもたらす.したがって,乱流を伴う現象で比較的長い将来の予測を行うことはきわめて困難となる.観測データとモデルを統計数理的に組み合わせて予測を行う方法として,データ同化(data assimilation)がある.本研究集会の目的は,広汎で深い乱流現象を,観測とモデルという視点から捉え直し,乱流現象を統計理論的に解析し実現象のモデルを作成していくために,参加者間で基盤を共有することにある.
[研究の成果]まず第一日目午前は,石川 洋一 氏(京都大学地球惑星)によって「データ同化手法を用いた海洋循環場の推定/予測システム」という講演が行なわれ,データ同化の考え方,数学的方法について説明された.午後は,藤井 陽介 氏(気象庁気象研究所)「気象庁における海洋データ同化システムの現状と特異ベクトルを用いた黒潮大蛇行の解析について」の講演に続き,吉田 恭 氏(筑波大学数理物質科学)の「乱流小スケールにおけるデータ同化の影響」,服部 裕司 氏(東北大学流体科学研究所)の「機械学習と数値気象モデルを組み合わせた風速予測」という講演が行なわれた.さらに,若手研究者によるポスター・セッション内容紹介が行なわれた後,田中 博 氏(筑波大学計算科学研究センター)によって「大気大循環モデルの変遷について」という講演が行なわれ,参加者との間で活発な議論が展開された.第二日目は,午前中に若手研究者八組によるポスターセッションを行われ,活発な議論が行なわれた.午後は,竹広 真一 氏(京都大学数理解析研究所)による「回転球面上の2次元乱流と縞状パターンについて」,および関井 隆 氏(国立天文台ひので科学プロジェクト)による「日震学と太陽のダイナミクス」という講演が行なわれた.
これらの講演・議論を通して,今後の乱流研究で不可欠な点は,非一様性,非等方性など対称性の破れた系での乱流を扱う統計理論やモデルであるとの認識が共有されることとなった.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

本研究会は理想的な乱流ではなく,現実の理工学現象に現れる乱流を取り扱うことに主眼をおいている.このような現実の乱流を解析するための統計理論と乱流モデル一般については
     書籍 横井・下村・半場・下村 編『乱れと流れ』(培風館,2008年)
に一通りの記述があり,この研究会の基盤となっている.

  研究会の講演等に関する情報源は以下の通り:

ポスター発表
・伊藤 純至(東京大学 海洋研究所)
  「Dust Devilの鉛直過度の起源の解析」
  http://dpo.ori.u-tokyo.ac.jp/dmmg/people/junshi/index.html
・犬伏 正信,小林 幹,竹広 真一,山田 道夫(京都大学 数理解析研究所)
  「Kolmogorov流の乱流化と共変Lyapunov解析」
・小布施 祈織,竹広 真一,山田 道夫(京都大学 数理解析研究所)
  「回転球面上の強制2次元乱流の漸近状態」
・木村 恵二,竹広 真一,山田 道夫(京都大学 数理解析研究所)
  「回転球殻内におけるBoussinesq熱対流の有限振幅パターンの安定性と伝播方向について」
  http://xxxx.ac.jp/
・佐々木 英一,竹広 真一,山田 道夫(京都大学 数理解析研究所)
  「回転球面上の帯状流の分岐」
  http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~takepiro/gfd.htm.ja
・佐藤 友俊,船越 智史(電気通信大学 大学院知能機械工学)
  「準地衡風点渦系の平衡状態:外乱と境界条件の影響」
  http://www.miyazaki.mce.uec.ac.jp/
・杉本 憲彦(慶應義塾大学 日吉物理学教室)
  「地球流体における渦と波の非線形相互作用の研究」
  http://k-ris.keio.ac.jp/Profiles/0040/0017018/profile.html
・堀田 英之(東京大学 地球惑星科学)
  「乱流拡散で説明する太陽の南北半球磁場の対称性」
  http://www-space.eps.s.u-tokyo.ac.jp/~hotta/

講演
・石川 洋一(京都大学 地球惑星科学)
  「データ同化手法を用いた海洋循環場の推定/予測システム」
・藤井 陽介(気象庁 気象研究所)
  「気象庁における海洋データ同化システムの現状と特異ベクトルを用いた黒潮大蛇行の解析について」
  書籍 淡路・蒲地・池田・石川(編)『データ同化』(京都大学学術出版会,2009年)
・吉田 恭(筑波大学 数理物質科学)
  「乱流小スケールにおけるデータ同化の影響」
  http://www.px.tsukuba.ac.jp/home/tcm/kyoshida/kyoshida-J.html
・服部 裕司(東北大学 流体科学研究所)
  「機械学習と数値気象モデルを組み合わせた風速予測」
  http://www.ifs.tohoku.ac.jp/divisions/jp/cfd_acfdl.html
・田中 博(筑波大学 計算科学研究センター)
  「大気大循環モデルの変遷について」
  http://air.geo.tsukuba.ac.jp/~tanaka/research.html
・竹広 真一(京都大学 数理解析研究所)
  「回転球面上の2次元乱流と縞状パターンについて」
  http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~takepiro/index.html
・関井 隆(国立天文台 ひので科学プロジェクト)
  「日震学と太陽のダイナミクス」
  http://hinode.nao.ac.jp/index.shtml

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石岡 圭一

京都大学

石川 洋一

京都大学

石原 卓

名古屋大学

犬伏 正信

京都大学

梅木 誠

東京大学

岡本 正芳

静岡大学

金田 行雄

名古屋大学

河原 源太

大阪大学

木田 重雄

京都大学

後藤 晋

京都大学

後藤 俊幸

名古屋工業大学

坂上 貴之

北海道大学

佐々木 英一

京都大学

佐野 雅己

東京大学

下村 裕

慶應義塾大学

関 眞佐子

関西大学

関井 隆

国立天文台

高橋 直也

電気通信大学

竹広 真一

京都大学

田中 博

筑波大学

田村 義保

統計数理研究所

藤 定義

京都大学

服部 裕司

東北大学

半場 藤弘

東京大学

藤井 陽介

気象庁 気象研究所

藤谷 洋平

慶應義塾大学

船越 満明

京都大学

堀内 潔

東京工業大学

松本 剛

京都大学

宮嵜 武

電気通信大学

八柳 祐一

静岡大学

山田 道夫

京都大学

吉田 恭

筑波大学

渡邊 威

名古屋工業大学