平成292017)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

29−共研−1019

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

7

研究課題名

古代社会の人口動態の推定

フリガナ

代表者氏名

ツチヤ タカシ

土谷 隆

ローマ字

Tsuchiya Takashi

所属機関

政策研究大学院大学

所属部局

政策研究科

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 古代社会の人口の推定は、考古学や歴史学における重要な研究テーマの1つである。ヌジ人名史料から復元された家系図および個人名が記載されるヌジ文書の情報を用いて,古代メソポタミアの時代のヌジ社会の人口動態推定を行い、紀元前15世紀における世界の中の1小都市ヌジの人口推定としての妥当性について考察している。
 当初は、個人名を索引の形式でアルファベット順に整理された書物「ヌジ人名史料」のうちの使用可能な全データを用い、家系図およびその他の情報との相互関係を凸2次計画問題として定式化することにより、ヌジ社会の人口動態推定を行った。その後、全人口の97パーセントを占めるテヒプティラの家系図のネットワークに特化した凸2次計画問題を解き、前述の結果と比較・検討することを試みた。後者の場合には、個々の生誕年・死亡年は一意には決まらないが、寿命の長さに関しては、初期値をある幅でランダムに仮定しても、特定の人々に対してはユニークに定まることを確認した。ヌジ人名史料から得られた比較的大きな家系図とその他の家系図との関係について、地主と小作人、富豪と庶民というような関係が家系図を比較することによって文書を介した関連から見いだせるかどうか試み、得られた結果から見えてくる社会の構図について議論した。当時の社会が中央集権的な社会であったのか、あるいは比較的平等な社会であったのかを図る指針を与えるものと思われる。また、先行研究における最大家系図テヒプティラの家系と、コンピュータ・プログラムにより自動的に構成された我々の家系図との相違点について検証した。同一の家系図に属すると見なす条件の相違、確率的に同一家系図と見なすプログラム設定の相違が考えられる。考古学者Maidmanらの書物や助言による情報(「ヌジ人名史料」から自動的には到底読み取ることのできない情報)を、先に求めた凸2次計画問題に組み込むことにより新たな知見を得た。人口の相当部分を占める、一人あるいは親子二人からなる家系図の解釈について探索を始めている。
 これまでの本研究課題の研究成果を、Nuzi Personal Names の解析の元データをデータベースで公開を目指して準備を進めている。月1・2度分担者による会合をおこない、必要に応じてメールによる議論おこなっている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

CIGS「経済・社会への分野横断的研究会」
日時: 2017年9月25日(月)10:00 〜 9月26日(火)15:00
場所: キヤノングローバル戦略研究所
「古代メソポタミアにおけるfamily networkと経済・社会活動:人名史料の電子化と解析 」
上田澄江(統計数理研究所・共同研究員),土谷隆(政策研究大学院大学),伊藤栄明(統計数理研究所・総合研究大学院大学
(名誉教授))

経済・社会への分野横断的研究会、文理融合シンポジウム
日時:2018年1月30日9:00〜1月31日
場所:統計数理研究所
「凸2次最適化による粘土板情報からの古代メソポタミア都市Nuziの社会動態の推定と解析」
上田澄江(統計数理研究所・共同研究員),土谷隆(政策研究大学院大学),伊藤栄明(統計数理研究所・総合研究大学院大学
(名誉教授))

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 栄明

統計数理研究所

上田 澄江

統計数理研究所

牧野 久実

鎌倉女子大学