平成242012)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

24−共研−2040

分野分類

統計数理研究所内分野分類

e

主要研究分野分類

1

研究課題名

統計理論に基づく数理的妥当性を有したメンバシップ関数構築法の開発

フリガナ

代表者氏名

ハスイケ タカシ

蓮池 隆

ローマ字

Hasuike Takashi

所属機関

大阪大学大学院

所属部局

情報科学研究科

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

66千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

情報科学技術の普及・発展に伴い,数値データを有効活用するための統計手法・データマニング手法の開発が重要性を増しているだけでなく,実社会の膨大かつ多次元の言語情報や画像情報の処理,人間個々の感性情報の有効利用手法の開発が求められている.特に人を介した意思決定の際には,合理的かつ客観的な意思決定を行うためにも,非数値情報解釈における個人感性の関数化手法が必要不可欠となる.
この関数化・数値化手法として,統計理論においては主観確率を利用したベイズ統計が利用されている一方で,個々のアンケート結果から個人特性を抽出したり,個人感性を直接グラフとして表現させることで得られるメンバシップ関数を利用した数値化手法も研究されている.後者の手法においては,個人が設定した集合に対し,ある事象が完全所属,完全非所属の場合は1,0で決定し,その他の状況においては0から1の中間値を設定することにより,感性の関数化・数値化を行っている.
メンバシップ関数を利用した場合は,数値・関数化の際の制約が緩やかなため,個々に合わせて関数を変化させることで,柔軟に対応できるとされている.その一方で,表現された関数が本当に個人の感性を表現しているのか,特に意思決定においては,関数を恣意的に変化させることで妥当な意思決定を導出できないのではないかといった,数理的・客観的側面での妥当性の保証に関する疑問が存在し,これらを解決するような手法は未だ存在せず,解決に導くための基礎研究もあまり進められていないのが現状である.またアンケートやグラフの直接表現による数値化は,個人に大きな負担をかけることとなり,実施時における心理状態の変化等も考慮しなければ,妥当性は保証されないものと考えられる.
そこで平成24年度の共同利用研究において,メンバシップ関数構築法の基礎概念と既存手法の洗い直しにより,ベイズ確率における主観確率の構成法と類似性の考察を行ってきた.そこでは主観確率とメンバシップ関数とは構成法の類似点は多いものの,非なる部分も多く確認できた.そこで,両概念の懸け橋となれる情報エントロピーを利用した数理的保証した新たなメンバシップ関数構築法を開発してきた.これにより,必要最低限の個人感性情報から,妥当と考えられるメンバシップ関数が構築可能で一手法が開発された.
しかし情報エントロピーをそのまま直接適用しても,メンバシップ関数として妥当と考えられる条件の一部を満たさないことがわかってきた.そこで本研究を平成25年度まで継続し,情報エントロピーの概念をメンバシップ関数が満たすべき条件下,および客観性を有する数値データで表現できる期待値や分散,その他統計的に意味のある条件下で拡張し,そこから得られる数理的に保証されたメンバシップ関数により,意思決定問題へ適用し,新たな非数値情報処理,統計解析手法の開拓を目指す.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

[1] T. Hasuike, H. Katagiri, H. Tsubaki, H. Tsuda, "Constructing Membership Function Based on Fuzzy Shannon Entropy and Human's Interval Estimation", Proceedings of WCCI2012(FUZZ-IEEE2012), pp. 975-980, 2012.
[2] 蓮池隆, 片桐英樹, 椿広計, "不確定性表現の基盤としてのファジィ推論 未来へ目を向けるソフトコンピューティング", オペレーションズ・リサーチ 経営の科学,57(10), pp. 551-556, 2012.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

平成24年度は研究会を開催しておりません.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

片桐 英樹

広島大学大学院

椿 広計

統計数理研究所