平成232011)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

23−共研−2033

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

離島における第一次産業振興と環境維持を考慮した地域政策モデルの構築

フリガナ

代表者氏名

コノシマ マサシ

木島 真志

ローマ字

Konoshima Masashi

所属機関

琉球大学

所属部局

農学部

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本研究では,離島における第一次産業振興とそこに起因する環境問題あるいは生態系保全問題に対して,1)産業振興のための最適資源利用モデル,2)環境問題に関わる空間的最適資源配置モデル,3)生産物の物流を左右し,産業振興と環境問題の両立を行う政策シミュレーションモデルを構築し,最終的にそれらを統合することにより,最適な地域政策の提言を可能にする地域政策モデルを構築することを目的とする.

 申請者らは昨年までの研究で,沖縄県のGISデータ構築のためのデータを収集し,土地利用図のGIS化を進めている.石垣島の森林計画図については,すでに入手済みであり,本年度,GIS化するための基本的な情報が揃いつつある.
 また,第一次産業振興とそこに起因する生態系保全問題に対しては,赤土流出と土地利用の関係について,沖縄県本島を中心にGISを用いて調べており,透視度測定法を用いて赤土流出の定量的評価を行っている.この手法は,調査対象地の海岸で底質を採取し,30cm透視度計を用いて,試料の透き通りの度合いを測り,赤土などの含有量の計算を行う.この手法はシンプルで,適用しやすいため,本年度,本研究でも採用する予定である.
 さらに,野生動物種の生息地の質を定量的に評価することができる生息地適性評価モデル(HSIモデル)のプロトタイプをOkinawa RailおよびOkinawa Woodpeckerについて構築した.これらHSIモデルは,それぞれの動物種にとって重要な環境要因を抽出し,これらの環境要因と生息地の質の関係をモデル化し,組み合わせることで,生息地としての質を総合的に評価するモデルである.HSIモデルは0-1までの数値をとり,1に近づくほど,生息地として適していることを表している.
 ここでは,環境要因の抽出のため,多くの文献・資料を収集し,調べた.これまで,Okinawa RailおよびOkinawa WoodpeckerについてのHSIモデルは構築されてこなかったため,ここでは,このモデリングアプローチのデモンストレーションを主目的とし,沖縄県本島北部の森林地帯の一部において,GISデータを整備し,これら野生動物種のHSIモデルを構築した.我々が選択した研究対象地の面積はおよそ430,000m2あり,HSIモデルで評価するため,この森林地帯を10mX10mのメッシュ状に分割し,それぞれのセルについてHSI値を計算した.HSIモデルの構築にあたり,各環境要因の様々な組み合わせが考えられるため,Okinawa Woodpeckerについては,3種類のHSIモデルを構築した.環境要因としてここで選択したのは,植生,胸高直径,傾斜の3つである.これらの組み合わせにより3つの異なるHSIモデルを構築した.それぞれHSI値の最大値は0.9程度,最小値は0.1-0.25程度で,最もHSI値として多いのは,0.3-0.7の範囲であった. 一方,Okinawa Railについては,環境要因として,樹高,胸高直径,河川からの距離,そして下層植生量の4つを選択した.Okinawa RailのHSIの最小値は0.176,最大値は0.619となった.これらのプロトタイプのモデルは,今後,更に,データ収集を進めていき,改良・修正を繰り返すことで,よりよいモデル構築に繋がると考えられる.また,管理最適化モデル,シミュレーションモデルとの結合により,森林管理や土地利用がこれらの生息地へ及ぼす影響を定量的に評価するシステムの構築に繋がる.現在,シミュレーションモデル,森林管理最適化モデルとの統合を進めている.
 また,政策のシミュレーションについては,補助金等の政策が,個々の土地利用の意思決定に及ぼす影響をシミュレーションすることが必要になる.申請者らは,これまで,GISとマルチエージェントモデルを結合した土地利用のシミュレーションモデルのプロトタイプを構築し,政策シミュレーション分析を行ってきており,本年度,このプロトタイプを拡張して,実際のGISデータをもとに,政策シミュレーションを行う準備が整っている.更に,空間的な政策(団地化やAgglomeration bonus)の影響を評価・可視化するために必要なアルゴリズムの構築を進めており,本年度収集するデータを用いた数値実験の基盤が整備されてきている.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

国際学会での発表:
Konoshima, M., Tokeshi, T., Yoshimoto, A., 2012, Evaluating Rare Wildlife Species Habitat on the Ryukyu Islands using an HSI model, FORMATH RYUKYUS 2012,March 17, Okinawa, Japan.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会の開催は行っていない.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

吉本 敦

統計数理研究所