平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−86

専門分類

8

研究課題名

複数の心理学領域の自由回答調査データの統計解析

フリガナ

代表者氏名

ドイ キヨハル

土井 聖陽

ローマ字

所属機関

宮崎産業経営大学

所属部局

経営学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

9 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

昨年度は、主に「動機づけ」領域の投影法文章データを電子ファイル化処理後、統計的解析(主に多次元解析法)を行い、「動機づけ」の従来の幾つかの概念すなわち、「達成動機」、「親和動機」そして「成功不安」の関係が示唆された。特に、従来の主観的なアフターコーディング方式だけでは得られなかった多元的なデータ構造の探索方法についての手掛かりが得られたことは一つの成果である。本年度は、大正領域を拡げると共に、テキスト型データの一般的な分析法の研究と応用可能性について、さらに検討を進める。


心理学において、言語反応や文章は直接的なデータとして重要であるが、その分析方法の制約から充分に利用されていない。特に投影法を用いて心理概念の研究を行う場合、得られた言語・文章データはあいまいな刺激に対する自由な回答のため、分析はさらに困難である。
目的は一人一人の回答者が書いた個々の文章の表面的な意味内容の検討ではなく、回答者群が有する心理概念の把握である。このような場合、文章データをテキストファイル化して分かち書きを施し、得られた回答者×単語の行列に対応分析・クラスター化法ななどを用いる自由回答型データの解析法が有効だと考えられ、成功不安に関する男・女学生の投影法文章データに適用された。
女子学生の結果から、「男、女」、「男子、女子」「女性」という性意識に関する語が3分類され、「男子、女子」は性別のみを意味したが、「男、女」は現実的、先入観的、「女性」には理想的な性別という語用論的含意が付加されていた。しかし、男子学生の結果では、「男」、「女性」、「男子、女子、女」という3分類で、女性は単なる性別で使われており、他は女子学生と同様であった。
「男、女」と「男子、女子」は、それぞれ反対の意味の語であるが、共通の語用論的含意が文脈のみでなく、単語の分類にも基盤を置いて見い出された。動機概念や属性データとの関連の検討という課題も残されたが、成功不安のコードにないキーコンセプトを見つけ、新たな語用論的含意も示し、総じて自由回答型データ解析法の有効性と可能性が明らかにされた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

土井聖陽・大隅 昇,動機領域投影法文章データの定性的解析,日本行動計量学会第26回
大会,1998年9月18日。
土井聖陽・大隅 昇,動機関連文章データの定性的解析,日本分類学会第15回研究報告会,
1999年3月20日。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

「動機づけ」、消費心理さらに経営情報などの分野における自由回答形式データをテキストファイル化し直接的に解析する方法と、従来のコード変換を施したアフターコーディング済みデータを解析する方法を同時に行い、比較検討する。特に、ラベル情報の多寡、自由かいと宇文の長短、含まれる概念数、摘出語数と出現頻度などを分析し、自由回答型データの方法論を考察したい。これにより、自由回答型データ解析の方法論の適用可能性や問題点を具体的に明らかにするとともに、各領域のデータの特質や構造を、従来とは異なる視点から比較検討することを試みる。このような研究を効率的に進めるために、貴研究所の教官や施設あるいはソフトウエアが必要と考える。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大隅 昇

統計数理研究所

川浦 康至

横浜市立大学

楠見 孝

東京工業大学

杉本 徹雄

上智大学

高木 修

関西大学

竹村 和久

筑波大学

辻本 英夫

大阪市立大学

福井 誠

甲子園大学