平成162004)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

16−共研−2024

専門分類

4

研究課題名

個票データの開示におけるリスクの評価と官庁統計データの公開への応用

フリガナ

代表者氏名

サイ シドウ

佐井 至道

ローマ字

Sai Shido

所属機関

岡山商科大学

所属部局

法経学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

11 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

個票データの開示におけるリスク評価としては,標本から母集団寸法指標(サイズインデックス)を
推定することが現在の主流である。これまでその推定のために様々な超母集団モデルが考案されている
が,母集団が極めて大きい場合,モデルによって推定値が極端に異なるという問題点が指摘されており,
その点を解決することが本研究の目的の一つであった。今年度の研究で,母集団の大きさがさほど大き
くない場合にも推定値に顕著な差が生じる可能性のあることが明らかになり,観測された標本寸法指標
と推定値の性質との関係も考慮に入れた総合的な解決を図る必要が生じている。またこれとは別に,確
率分割モデルについても引き続き精力的な研究が行われ,体系的な解明に関するいくつかの成果が得ら
れている。
 母集団寸法指標の推定は,これまで母集団全体の大きさのみが既知という仮定の下で行われてきた
が,実際には母集団寸法指標は未知でも数個のキー変数の組み合わせにおける度数分布が既知である場
合が多い。そのような情報を利用した推定方法について検討することも本研究の目的の一つであった。
今年度,キー変数を利用して母集団を部分母集団に分け,各部分母集団の大きさの情報を利用して推定
の安定化を行うための研究が前進したことは成果である。それ以外の母集団情報を利用する方法につい
ても,今後検討を行いたい。
 これまで提案されている母集団寸法指標の制約付きノンパラメトリック最尤推定法では,尤度関数の
最大値を探索的な方法で見つけ出す必要があり,大きな母集団に対する推定では計算時間上,推定が困
難であった。今年度,尤度関数を離散型から連続型へ見直し,ペナルティー付きで尤度最大化を図る方
法や,不等式制約条件を等式化しながら段階的に最大尤度に近づける方法など,いくつかのアイディア
が出され,来年度以降,その実現を図りたいと考えている。
 個票データ開示に関するこれまでの検討では,リスク評価に研究の多くが集中していた。元々この問
題はリスクを減少させるための秘匿方法の研究と秘匿後の個票データの有用性の検討とが並行して行
われるべきである。この問題についても昨年度から引き続き研究が行われた。
 また個票データの秘匿やリスク評価の手法と比較して,多元分割表のような表形式データの公開に関
する研究は大きく立ち後れており,今年度はその研究の糸口を見つけることを目的に掲げていた。2次
元分割表の場合には比較的簡単な手法であっても,3次元以上の多元分割表では適用困難なものが現在
においてもなお多いことが報告された。しかし,グラフィカルモデルに関する研究など,秘匿やリスク
評価につながる基礎的な研究では大きな成果があった。
 今年度も統計数理研究所内外において数回の研究会を開催した。2005年1月8日に研究所で開催さ
れた研究会では,来年度以降の研究につながる多くのアイディアが出された。科学研究費補助金の研究
グループの主催で開催された「個票開示問題および関連領域に関する研究集会」では,関連領域や他領
域の分野の研究者との意見交換が行われ,個票開示問題の重要性を周知するよい機会になったと思われ
る。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

今年度発表された論文,または今後発表されることが決定している論文は以下の通りである。
1.佐井至道,母集団寸法指標の制約付きノンパラメトリック推定,Proceedings of the 16th RAMP
Symposium,149-163。
2.佐井至道,部分母集団の情報を用いた母集団寸法指標の推定とノンパラメトリック推定の改良,岡
山商大論叢,第40巻,第3号。(印刷中)
3.竹村通彰,多次元分割表のグラフィカルモデルの推定と個票開示問題への応用,Proceedings of the
16th RAMP Symposium,165-173。
4.Hoshino,N.,Modeling strategy for the risk assessment of privacy,Proceedings of the 16th
RAMP Symposium,133-148.
5.Hoshino,N.,Engen's extended negative binomial model revisited,To appear in Annals of the
Institute of Statistical Mathematics.
 また今年度,学会などにおける報告は次の通りである。
1.大森裕浩,非対象性のある確率的ポラティリティモデルの混合正規分布,2004年度統計関連学会連
合大会予稿集,301-302。
2.佐井至道,部分母集団の情報を用いた母集団寸法指標の推定,2004年度統計関連学会連合大会予稿
集,241-242。
3.佐井至道,部分母集団の情報を用いた母集団寸法指標の推定,個票開示問題および関連領域に関す
る研究集会資料。
4.竹村彰通,青木敏,ノルム縮小マルコフ基底の定義と例,2004年度統計関連学会連合大会予稿集,
85-86。
5.竹村彰通 他,多元分割表のグラフィカルモデルの推定と個票開示問題への応用,個票開示問題お
よび関連領域に関する研究集会資料。
6.青木敏,竹村彰通,多元分割表のグラフィカルモデルのマルコフ基底,個票開示問題および関連領
域に関する研究集会資料。
7.星野伸明,疑似多項分布とその極限モデルについて,2004年度統計関連学会連合大会予稿集,
239-240。
8.星野伸明,プラバシーリスクの定量化と超母集団モデル,個票開示問題および関連領域に関する研
究集会資料。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

テーマ:個票データの開示におけるリスクの評価と官庁統計データの公開への応用
開催期日:2005年1月8日(土)10:00〜15:00
開催場所:統計数理研究所研修室
参加者数:約10名
テーマ:個票開示問題および関連領域に関する研究集会(主催は科学研究費補助金研究グループ)
開催期日:2004年11月19日(金)10:00〜20日(土)15:00
開催場所:鹿児島大学理学部1号館101講義室
参加者数:約30名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

稲葉  由之

総務省

打浪 清一

九州工業大学

大森 裕浩

東京大学

加納 悟

一橋大学

瀧 敦弘

広島大学

竹村 彰通

東京大学

田村 義保

統計数理研究所

福重 元嗣

大阪大学

星野 伸明

金沢大学

和合 肇

名古屋大学