平成152003)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

15−共研−2031

専門分類

7

研究課題名

皮膚病変の(コンピューターによる自動診断のための)数値化と増殖モデル作成

フリガナ

代表者氏名

イマヤマ シュウヘイ

今山 修平

ローマ字

Imayama Shuhei

所属機関

国立病院九州医療センター

所属部局

皮膚科

職  名

医長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的:老化とともに皮膚は様々の変化をきたすが、それを視・触覚的に評価することによりヒトは相手の年齢
を判断し(種の保存のための)情報を処理する。高齢者皮膚は肉眼的には、?全体に弛んでいて、?皺があり、
?薄く、触ると、?カサカサと乾燥していて、?冷たく、顕微鏡的には、?細かい傷が多く、?色・表面の模
様・角質の付着の程度・表面の平滑さなどが不均等である。すなわち老化の形態学は不均等性(unevenness)
の拡大でもある。たとえば「タルミ」は皮膚の収縮能低下による皮膚厚の不均等であり、「シワ」は負荷により
生じた変形を均等に組織に拡散できないことよる線状の歪みであり、老人にみられる「シミ」はメラニン色素
の分布の不均等の結果であることなどは良い例である。
 中でも本邦の高齢女性に治療要望の多いシミはメラニン色素が部分的に高密度分布した状態であるが、従来
はメラニンを産生する細胞が過剰産生するためと考えられてきた。しかし組織学的にシミ病変を観察したとこ
ろ、メラニンを受け取った表皮細胞が(他の細胞へ)分配せずに自らの細胞内に貯留してしまう異常の可能性
が示唆された。確かに両頬部にシミが好発するのは、同部の皮膚が単位面積あたり最大の紫外線暴露を受ける
ため(核内情報保護のために)表皮細胞がメラニンを貯留し続けるという防御機構によると考えられる。そこ
で以下の方法によりシミの形成機序の数理生物学的解析を計画した。
経過の概要:表皮構築は本多・種村らのランダム配列モデルによって説明されるが、その構成細胞である表皮細胞
が、新たな(より色素を貯留する性質の細胞)クローンに置換されてシミが出現すると考えた場合、そこでは
既存の細胞群と、増殖しつつあるクローン独特の増殖法則との相克があり、その結果が臨床的なシミの表現形
であるに違いない。
 表皮そのものの構築(ランダム配列モデル)の法則は既に判明しているから、シミの表現形を詳細に観察す
ることにより、逆行性に、新たな細胞クローンの増殖法則を抽出することが可能であると考えられ、最終的に
は、その阻害によりシミの発生を予防できる可能性がある。
 そこでシミの病変ごとに色調と形状をモニターする作業を今山が担当し、得られたデータを本多が数理生物
学的に解析し、さらに種村が統計学的な評価モデルを構築するべく検討中である。この共同研究により、言わ
ば安定した皮膚での動的平衡モデルであったランダム配列モデルを、老化に伴う皮膚の形態変化へと拡張する
ことができ、さらには、その再構築(である病変)をも説明できるような一般的モデルへと展開することが期
待される。皮膚病変の構築を支配する法則の解析と、その(既存の)正常構築の法則との関係とを評価する研
究は、医学的に言えば,良性か悪性かを数理的に解析することであり、外科的治療への数理学的決定基準を提
供することである。従って、ともすれば経験的であった医学評価を数理学的に再評価することになるため、医
学の理論的理解と治療への新展開をもたらすことが期待される。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所 

本多 久夫

兵庫大学