平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2034

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

演奏舞台芸術の需要と供給から見た芸術活動の将来性

フリガナ

代表者氏名

アリタ フミコ

有田 富美子

ローマ字

Arita Fumiko

所属機関

東洋英和女学院大学

所属部局

国際社会学部国際社会学科

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 第2次世界大戦が敗戦で終わり、日本は文化国家を目指したとされてきたが、実質は高度成長の背後にある経済再建が主であった。特にバブル期には多様な文化が享受されたが、その後の、俗に「失われた20年」とも呼ばれる長い経済低迷時期のなかで、芸術家たちの生活状況が気になる。日本の芸術家たちはどのように暮らしてきたのであろうか。これから後も生活していけるのであろうか、未来への展望はどのようにして切り開かれるのか。
また一方で、少子高齢化の時代における芸術需要の変化も大きな関心事である。ともすれば、 若者の新しい文化に目を奪われがちであるが、団塊の世代にはお金と時間が潤沢な人々が多数存在する。これらの高齢者は、どのような文化活動を行い、何を希望しているのだろうか。
文化と言っても、定義も人によって専門分野によって様々であり、また裾野も広いので、本研究では、考察の対象を文化の一部である西洋の音楽(オーケストラ、オペラ、バレエ等)の演奏舞台芸術に限り、検討する。我々は、過去にこれらの分野に関して複数の調査を行ったことがあり、個票も保存されており比較的容易に再解析が可能であると考えられるため、以下の3点についての考察をしたうえで、最終的に、日本における洋楽の発展の方向性を見極める。
 第1に、音楽学校や美術学校を出た人は、現代の日本社会で芸術家としてどこまで自立して生活していけるのかについて検討した結果、音楽家の多くは、自由業者として生計を立てているが、演奏活動と個人レッスンを除くと職がなく、自由業者として生計を立てているが、無収入に近い。
 第2に、芸術家自身以外にそれらの人を支えているのはどのような人たちか。また世代により需要はちがうのかについて検討した結果、子供が小さいうちはともかく、子供の有無、介護の有無などはコンサートホールにいかない理由にはなっていないこともわかった。また、大学生への独自の調査からは、過去1年間のライブ鑑賞経験において、現代演劇、クラシック音楽は10%台、ポピュラー音楽は20%台となっていて、若者はポップカルチャー主流であることは間違いない。しかし、20〜30歳の若者のクラシック音楽への興味は高齢者に比べて高く、音楽を聴く機会が増えればクラシックフアンを増やすことは、まだまだ可能だろう。

 ここでは、文化の対象を、西洋の音楽(オーケストラ、オペラ、バレー等)の演奏舞台芸術に絞り検討する。それは、過去に、これらの分野に関しては我々の行った調査が行われており、前者は個票を保存しており比較的容易に再解析ができるためである。そのうえで、以下の考察をおこなった。
第1に、音楽学校や美術学校を出た人は、現代の日本社会で芸術家としてどこまで自立して生活していけるのかについて検討した結果、音楽家の多くは、自由業者として生計を立てているが、演奏活動と個人レッスンを除くと職がなく、自由業者として生計を立てているが、無収入に近い。音楽大学に入学するまでに高額なレッスン料を払い、難関の音楽大学に入学してもソリストとして生き残れるのは、本おひとにぎりであり、教員か個人レッスンに甘んじることになることが分かっていても、音楽家としての道を選ぶ動機にまではたどり着けなかった。
 第2に、芸術家自身以外にそれらの人を支えているのはどのような人たちか。また世代により需要はちがうのかについて検討した結果、子供が小さいうちはともかく、子供の有無、介護の有無などはコンサートホールにいかない理由にはなっていないこともわかった。
また、「学生調査」からは、過去1年間のライブ鑑賞経験において、伝統演劇、オペラ等、舞踊・舞踏・バレエ、大衆芸能の鑑賞経験者率は、1桁台と低い数値、現代演劇、クラシック音楽は10%台、ポピュラー音楽は20%台となっていて、若者はポップカルチャー主流であることは間違いない。20〜30歳の若者のクラシック音楽への興味は高齢者に比べて高く、音楽を聴く機会が増えればクラシックフアンを増やすことは、まだまだ可能だろう。
第3に、「自由記述」から、聴衆は、芸術鑑賞や芸術活動を行うための施設や場を求めていること、宣伝や広報がまだまだ不十分であることがわかった。調査時点では今のようなSNSがないため、コンサートの感想の伝播は悪かったと思われるが、現在では、クチコミによる評価は瞬く間に広がるし、どんなコンサートがあるかをインターネットで掲載しているので、簡単に探すことができる。学校単位で芸術鑑賞をするなどの学校教育も含め、芸術に関する有効な教育を考える余地が残っていると思われる。料金が高いことも挙げられるが、今の料金でも音楽家が、生計を立てるにはほど遠いわけで、料金を下げるのではなく、料金に見合う満足感をいかに提供するか考える必要がある。



 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

有田・松田・山口・金城・土屋 「演奏舞台芸術の需要と供給からみた芸術活動の将来性」統計数理研究所 共同研究リポート3682016年3月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

本年度の研究の分担の内容については、それぞれのメンバーと個別に打ち合わせを行い開始した。
夏休みは、データが揃わなかったので開催できなかったため、研究成果の出揃った、2月ー3月に行った。
1.2月21日(日)国際文化会館(六本木)全員(4名)
 1)今回の報告書取りまとめの責任者として有田から経緯の説明。
 2)芸術家の動向(松田)
 3)公的データによる供給の分析(有田)
2.1.3月20日(日)国際文化会館(六本木)全員(4名)
 1)公的データによ授業の分析(有田)
 2)大学生におこなった芸術鑑賞に関するアンケートの時系列分析(山口)
 3)大学生におこなった芸術鑑賞に関するアンケートの自由記述をもとにした質的分析(金城)
  
なお、統計数理研究所を利用しなかったのは、メンバー集まれる曜日が日曜日に限られており、日曜日は統計数理研究所が利用できなかったためである。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

金城 ふみ子

東京国際大学

土屋 隆裕

統計数理研究所

松田 芳郎

公益財団法人統計情報研究開発センター

山口 幸三

公益財団法人統計情報研究開発センター