平成71995)年度 共同研究B実施報告書

 

課題番号

7−共研−3

専門分類

3

研究課題名

脳神経データの非線形時系列解析

フリガナ

代表者氏名

オザキ トオル

尾崎 統

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

予測制御研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

脳神経学者の間で計測した脳神経データの非線形力学系による特徴づけが関心事となっている。特にてんかん患者の脳波を非線形力学系を用いて表現する為の非線形力学系モデルの当てはめが必要。これを当研究所で開発された局所線形化の手法を用いて実現化することをめざす。


以下の4つの課題で成果を得た。
1) 確率微分方程式の数値解法
ゼッテンバーグモデル利用のためにその前段階として確率微分方程式の数値解法の収束のオーダーの評価をおこなった。オイラー法、ルンゲークッタ法と尾崎の局所線形化法、庄司−尾崎の新局所線形化法の収束のオーダーを解析解が得られるケースについてシミュレーションデータを使って比較し、尾崎−庄司の新局所線形化法が最も収束のオーダーが高いことを示した。
2) カオスの同定
ゼッテンバーグモデルは高次元(11次元)のためその前に次元の低い非線形力学系モデリの例としてディスクダイナモの名で知られるカオスのモデルを取り上げ、それから生成されるデータを使って、カオス非線形力学系のパラメター推定が可能なことを確認した。推定の方法は局所線形化法に基礎をおく局所線形化フィルターと最尤法を用いる。また最尤法のために必要な数知的最適化に伴う種々の困難点がイノヴェーションを綿密にチェックすることで解決できることを見い出した。
3) ゼッテンバーグモデル(Zettenberg Model)
脳波の計測データで最も典型的なパタンのひとつ、アルファ波の数学的モデルとしてZettenberg Modelと呼ばれる11次元の非線形確率微分方程式モデルがある。このモデルはデータから推定することは困難とされていたが、我々は局所線形化フィルターを用いる最尤法を適用することを試み、実際にこれが可能であることをシミュレーションデータと実際の計測データとで確認することができた。
4) 非線形自己回帰モデル
脳神経のもう一つの典型的なものにテンカン発作時のデータがある。このデータは非線形性が非常に強く、このような非線形性を再現するパラメトリックモデルは既存の時系列モデルの中にはない。ノンパラメトリックARモデルが時によい再現性を示すときがあるが、ノンパラメトリックモデルはデータの発生機構に関する情報が皆目得られないという弱点がある。我々は尾崎によって開発されたExponentialARモデルの一般化によってGenaralizad ExponentialARモデルを導入し、テンカン発作の実データを再現できることを示し、同時にこのような非線形パタンの発生メカニズムのある種の特徴づけができることを示した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

前述のトピックスについて現在4つの論文を執筆中。一部は"Recent progress in continuous time modelling in time series analysis"として統計数理研究所共同研究レポートに収録。また共同研究シンポジウムでも発表した。


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

実験データはキューバ神経科学センター副院長 Valdes氏を中心とする研究グループが準備し、当研究所の研究者尾崎がモデルの当てはめを行う。今年の秋にキューバの研究グループが国際会議出席の為来日する予定で、その際、当研究所でセミナーと研究討論の機会を持つことを計画している。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

Valdes Pedro,A.

キューバ神経科学センター

Jimenez J.,Carlos

キューバ神経科学センター