平成252013)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

25−共研−4204

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

地域金融機関貸出の地域産業へ与える効果に関する統計的分析

重点テーマ

ファイナンスリスクのモデリングと制御

フリガナ

代表者氏名

コン ヨシノリ

今 喜典

ローマ字

kon yoshinori

所属機関

青森公立大学

所属部局

経営経済学部

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

101千円

研究参加者数

4 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

(研究目的)
地域金融機関による地域企業・産業への融資の効果について、対立する2つの見方を検証することが研究目的である。第一の見方は、地域金融機関は地域企業の資金ニーズについて十分な情報を持つため、成長性の高い企業・産業へ重点的に資金供給できると考える。一方、第二の見方では地域金融機関によるリレーションシップ継続は必ずしも企業情報の蓄積につながらず、企業へのコンサルティング能力は不足であり、また地域金融機関は地域経済への暗黙のコミットメントが期待されるため、収益性の低い借手に対しても貸出が固定化する性質があるなど、融資の効果には否定的である。
本研究は、地域金融機関貸出が地域の実体経済へ与える効果について対立する見方を統計的に検証する。その際、ミクロとマクロの中間的アプローチ(メゾアプローチ)を採用し、地域金融機関貸出の業種別構成と地域の産業構成の関係に焦点をあてる。

(研究経過)
上記の目的のため、本年度は地方銀行のディスクロージャー情報から得られる融資に関する産業別残高情報と、当該地方銀行の位置する地域圏の産業構成の情報を利用した。融資の効果は、金融機関サイドの信用リスクで把握することとし、不良債権比率に注目した。
また、各地域における当該地域金融機関のウエイトがある程度大きいことを前提としているので、地銀・第二地銀の融資シェアが50%を超えている道県に本店が所在する地方銀行(56行)に限定した。使用データは、ディスクロージャー資料の入手可能性、産業分類の改定への各行の対応状況を考慮して、平成21年度(平成22年3月末)とした。
産業以外の政府・地方公共団体および個人向け貸出を調整した産業向け貸出に占める融資構成比率と、県民経済計算の政府サービス生産者を調整した民間部門生産額に占める各産業の比率に注目した。分析によって得られた中間的結果は、以下のようになる。
(1)産業ウエイトの大きい業種への融資構成比は大きいという、正の相関がある。
(2)産業ごとに融資構成比の大小に特徴がみられる。
(3)産業ウエイトと当該地銀の業種別融資構成比のギャップと地銀の不良債権比率の関係をみると、地域の業種特性を考慮したうえで、このギャップが大きい地方銀行はリスク債権比率が小さい。
 この結果は、優れた銀行は融資選別においてリスクの少ない産業を重点としているという解釈と整合的である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

 本研究の中間報告として、以下の報告書を発表した。

今 喜典・佐藤整尚『地域金融機関貸出の地域産業へ与える効果に関する統計的分析』、(統計数理研究所共同研究リポートNo.316)、2014年3月。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

以下の研究会において、中間報告を行った。

今 喜典・佐藤整尚「地域金融機関の業種別貸出と金融機関リスク」、統計数理研究所リスク解析戦略研究センター、第2回金融シンポジウム「ファイナンスリスクのモデリングと制御」(2013年11月5日、学術総合センター)。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

佐藤 整尚

統計数理研究所

土屋 隆裕

統計数理研究所