平成212009)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

21−共研−1013

分野分類

統計数理研究所内分野分類

g

主要研究分野分類

1

研究課題名

離散確率分布論とその統計的応用研究

フリガナ

代表者氏名

イノウエ キヨシ

井上 潔司

ローマ字

Inoue Kiyoshi

所属機関

成蹊大学

所属部局

経済学部

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

有限個の文字を値にとる離散確率変数列(試行列)において,長さ有限の文字列(パターン)や連に関する確率分布の厳密な導出方法の提案,およびその統計的応用の研究を行ってきた.これまでに考察してきた確率分布は主に,(1)パターン(または連)が与えられた回数だけ起こるまでの待ち時間分布, (2)長さ有限の試行列において,パターン(または連)の起こる数の分布,に大別される.これらの確率分布論研究は理論的な関心を集めているだけではなく,さまざまな諸分野へ極めて有益な方法論を提供し続けている.最近特に重要度が増している,走査型統計量,パターンマッチング,信頼性工学,品質管理,DNA系列の統計的解析といった研究分野への応用可能性を念頭に置きながら,いままで多くの研究成果を論文としてまとめ,学会・研究集会で発表してきた.
今年度の結果は次のとおりである.
 いままで,離散確率分布の研究は線形構造体上での研究がほとんどであったが,非線形構造体(各頂点が確率変数であるランダムなグラフ)上での分布問題を扱った.有向木の各頂点に{0,1}-値確率変数が対応していて,根から離れていく方向に向きが与えられているとし,さらに,この有向木上に高次マルコフ依存性を仮定する.この有向木上の連の数の分布を異なる3つの数え方(重複しない数え方,ある長さ以上を数える数え方,重複する数え方)を採用して考察した.また,ある長さの観測領域(window)を動かしたときの走査型統計量の分布を異なる3つの数え方のもとで考察した.統計的応用例として,2つの信頼性工学的システム,consecutive-k-out-of-n:F system,k-within-consecutive-w-out-of-n:F systemを考察し,その信頼度の厳密な計算を行った.これらの結果はInoue,K.and Aki,S.(2009) Communications in Statistics−Theory and Methods,Vol.38(5),621−641 に掲載された.
ここで導出した結果を,2009年度統計関連学会連合大会(同志社大学9月6日〜9日)において講演した.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Inoue,K.and Aki,S.(2009).Distributions of runs and scans on higher order Markov trees,Communications in Statistics−Theory and Methods,Vol.38(5),621−641.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

安芸  重雄

関西大学

平野 勝臣

情報・システム研究機構 統計数理研究所