昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−75

専門分類

7

研究課題名

画像処理によるカイコの繭の形態測定とその多変量解析

フリガナ

代表者氏名

ナカダ トオル

中田 徹

ローマ字

所属機関

 

所属部局

職  名

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

生物形態の測定は,分類学の基本的な問題であると同時に,目的とする形質によっては各方面に応用できる点も多い。しかし,実際には労力と時間を要する作業のため,重量の計測におけるバランスとパソコンの連結のような効率的な手段の開発が困難であった。そこで新しく開発した画像処理システムは,短時間に多量の資料を処理可能となったので,これによりカイコの形態測定と各種の多変量解析を行なう。


現在世界各地で農業生物として飼育され,絹生産に直接関連しているカイコ(Bombyx mori)は,野生種のクワコ(B.mandarina)に由来するものとみられている。飼育により,野生種にみられた幼虫の移動能力や成虫(蛾)の飛翔能力を失ない,絹生産能力,生長の均一性および生存力等が高まると同時に,各地域の環境に適応した品種が形成されたと考えられる。その過程で分化した繭の形は,丸・楕円・俵・紡錘・ピーナッツ状など独特の形態を維持しているために,カイコの品種分化をさぐる手がかりの一つとして重要である。
形の測定は一般に手数がかかり,正確なデータを得るのが困難であるが,筆者が近年開発に成功した画像処理システムは,パソコンとカメラを連結したもので,これにより各種の系統の繭の特性を迅速に計測でき,価格的に安価な構成となっている。
これにより繭の形態に関係する諸変数(長径・短径・断面積・体積・長幅率など)を得て,系統維持を行なっている各品種の特性値の解析を行った。さらに検討をすすめて,個体レベルと集団レベルにおける変異の計量的把握を行い,その成果の一つとして,繭型の雌雄差について多変量解析を行っている。カイコの実用品種は系統間交雑(〓)を利用しているが,〓を作るには両親系統を成虫になる以前に分離して,正逆交雑を行う必要がある。そこで雌雄分離の方法が以前から研究されているが,繭の重量の雌雄差を利用するのが,取扱上便利である。しかし,系統により雌雄差の程度が異なるので,これが接近している品種では繭型データを導入して,重量と形に関係する諸変数を組合せて多変量解析を行い,雌雄判別効率を高めることに成功した。
このように雌雄による形態発現の違いを知るという生物学的な興味のみならず,農業上の実用的な技術開発にも関係する点で有用であり,さらに今後は品種分化と生物進化についての考察を行う予定である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

NAKADA,T.(1788)Multivariate Analysis of some Cocoon characters and its Utilization of Sex Discrimination in the Silkworm,Bombyx mori.
Abstracts of 16th International Congress of Genetics.Genom vol.30.suppl.1.
(1988.8カナダ・トロント,国際遺伝学会発表)
NAKADA,T.(1989)On the Measurement of Cocoon Shape by Use of Image Processing Method,with an Application to the Sex Discrimination of Silkworm.
The 6th International Congress of SABRAO.
(1989.8筑波,環太平洋育種学会発表予定)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

カイコの諸系統を用いて,繭の形態測定を行ない,得られたデータを用いて統計学の手法により解析する。
カイコはいうまでもなく絹生産のため世界各国で飼育され,日本は品種育成から飼育技術,さらに各種の絹製品の開発に至るまで,世界の主導的立場にある。世界各地に適応放散した品種の遺伝的特性を把握するための研究を続行中であるが,今回は絹生産の基礎となる繭の形態の変異や品種内の雌雄差に関するデータを得て,多変量解析を行なうので,その過程で統計学的手法が必要であり,専門研究者との共同研究を要望する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

村上 征勝

統計数理研究所