平成232011)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

23−共研−2025

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

小学生の英語学習に対する動機づけの国際比較調査―自己決定理論の観点から―

フリガナ

代表者氏名

カレイラマツザキ ジュンコ

カレイラ松崎 順子

ローマ字

Junko Matsuzakzi Carreira

所属機関

東京経済大学

所属部局

現代法学部

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的
韓国は日本よりも10年ほど早く小学校での英語の必修化を行い、進んだ英語教育を行っており、また、同じEnglish as a foreign language(EFL)の環境にあることから、韓国から多くのことを学べる。ゆえに、本研究では、韓国と日本の小学校において英語学習に対する動機づけの調査を行い、どのような点が異なり、どのような点が同じであるかを明らかにし、日本の小学校の英語教育に示唆を与えていく。
 Vallerand (1997)はDeci& Ryanが提唱した自己決定理論にもとづき階層的内発的・外発的動機づけモデルを提案している。階層的内発的・外発的動機づけモデルでは自律的に支援する環境は自律性・有能性・関係性を介して動機づけに影響を与えると仮定している。本研究では先駆けて進んだ英語教育を行っている韓国の小学校の状況と日本の小学校の英語教育の状況を比較し、これらの要因がどのように両国で異なるのかを明らかにしていく。
成果
 Deci& Ryan の自己決定理論をもとにした質問紙を韓国語に翻訳し,作成し,日本と韓国の小学校において質問し調査を行った。本研究に参加したのは東京都近郊の小学校とソウル近郊の小学校の小学5・6年生である。
 自己決定理論に基づいた動機づけ(外的調整・取り入れ調整・同一調整・内発的動機づけ)に関する項目を日本と韓国において別々に探索的因子分析を行った結果,両国とも同じように「外的調整」,「取り入れ同一調整」,および「内発的動機づけ」の3つの因子が抽出された。ただし,項目9のみが日本と韓国で異なった因子に負荷していた。これらのことから,西洋で発達してきた自己決定理論は通常は「外的調整」,「取り入れ調整」,「同一調整」,「内発的動機づけ」の4つに区分されているが,本研究結果から日本と韓国の児童は西洋の児童とは異なり,英語の学習において「取り入れ調整」・「同一調整」を同一のものとみなしている可能性が示唆された。これらの結果から,西洋で発展してきた自己決定理論は,アジアにおいては再考が必要であるといえるであろう。
次に,日本と韓国で異なって負荷した項目9をはずして,「外的調整」,「取り入れ同一調整」,および「内発的動機づけ」に負荷したそれぞれの得点を合計し,下位尺度を作成した。これらの3つの下位尺度においてt検定を行った結果,「取り入れ同一調整」のみ日本の得点のほうが有意に高かった。これらのことから,日本の児童のほうが人の目を気にしたり,体面を気にして英語を学習する傾向があるといえるであろう。
 また,心理的三欲求(自律性,有能性,関係性)においてもt検定を行った結果,「自律性」,「有能性」において韓国の得点が有意に高く,「関係性」においてのみ日本の得点が有意に高かった。韓国の民族性は主体的であり,日本の民族性は他との調和を重んじる傾向があるとよく言われているが,小学生の英語学習に対する態度にもそれらが顕著に表れていた。



 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

2012年9月BAAL 2012 Conference において発表予定である。
JASTEC Jouranalに投稿予定である。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会は開催していない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

尾崎 幸謙

統計数理研究所

前田 忠彦

統計数理研究所