平成302018)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

30−共研−2001

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

1

研究課題名

雲解像非静力学気象モデルを用いた粒子フィルタの開発

フリガナ

代表者氏名

カワバタ タクヤ

川畑 拓矢

ローマ字

Kawabata Takuya

所属機関

気象研究所

所属部局

予報研究部

職  名

主任研究官

配分経費

研究費

40千円

旅 費

10千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

夏季の午後にしばしば発達する積乱雲の発生や強度を予測することはきわめて困難である。これは積乱雲の発生・発達過程および周辺環境場との関係がきわめて非線形であり、このため、積乱雲が、いつ、どこで、どのように発達するのか、時空間に大きな不確実性を持っているからである。本研究では、非線形・非ガウス分布を陽に表すデータ同化手法である粒子フィルタを用いて、雲解像非静力学数値モデルと組み合わせたデータ同化システムを開発し、局地豪雨へ適用することを試みる。そして本システムによって算出される積乱雲内部の水物質やその環境場(水蒸気、気温場など)に関する非ガウス確率密度分布を用いて、積乱雲の発生・発達に関する不確実性がどこからもたらされるのかを明らかにすることを目的とする。
 申請者ら(上野と川畑)は気象庁非静力学数値モデル(JMANHM)を用いた粒子フィルタ(NHM-PF)の開発を2017年より開始し、基礎的な開発を行っている。このNHM-PFを局地豪雨スケール(水平解像度1〜2km)に応用すると、積乱雲に関する非ガウス解析が可能になる。例えば、ある時点で得られた水蒸気場などの積乱雲周辺観測データと、その後の積乱雲の発生・発達との関係は非線形であり、統計的に非ガウス分布をなすと考えられる。まず、ある時刻における観測データに対して、例えばアンサンブルメンバーによって局地前線の位置が大きく異なるような環境場が存在しうる。これらは積乱雲の発生位置、時刻、発達の度合いなどが全く異なる未来へつながっている。このような非線形性に対する確率分布を明らかにすることは、積乱雲の発生・発達に対して、どのような領域のどのような要素が線形につながり、あるいは非線形につながっているのかを明らかにすることであり、すなわち積乱雲の環境場や内部構造に関する敏感性を明らかにすることである。これは積乱雲がどのように発生・発達するのかという知見に直接結びつく。
 本研究においては、世界で初めてPFを局地豪雨スケールに適用し、積乱雲内部や周辺において大きくなっているものと考えられる非線形性や非ガウス性について調査を行う。併せて非対角成分を含む観測誤差共分散行列の動的推定を行い、時空間に変動の大きな現象であるメソ対流系の確率密度を正しく評価することを試みる。
 今年度は、1000メンバーのアンサンブルを用いた観測システムシミュレーション実験(OSSE)によって積乱雲の発生・発達に関わる非ガウス性を評価した。まず雲が発生する以前から、前線面の上昇流に非ガウス性が観察され、同時にスプレッドが大きいことも確認された。ここから水蒸気の凝結と共に相対湿度、水蒸気に非ガウス分布が伝搬し、さらに時間と共に温位、水物質へと拡大していった。積乱雲として発達するときにはすべてが非ガウスとなっていた。積乱雲の通過後、ガウス性が回復し、一般場はガウス性が卓越していることが示唆された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Kawabata, T., and G. Ueno, What is the source of chaos in MCS?, ICMCS-XIII, Mar. 2019
Kawabata, T., and G. Ueno, On Non-Gaussian Probability Densities on Convection Initiation and Development using a Particle Filter with a Storm-Scale Numerical Weather Prediction Model, International Symposium on Data Assimilation 2019, Jan. 2019
川畑拓矢, 上野玄太, 雲解像粒子フィルタを用いた積乱雲の発生・発達に関する確率分布解析, 第32回数値流体力学シンポジウム, 2018年12月
川畑拓矢, 上野玄太, 雲解像粒子フィルタを用いた積乱雲の発生・発達に関する確率分布解析, 日本気象学会2018年度秋季大会, 2018年10月
Kawabata, T., and G. Ueno Non-Gaussian PDFs on Convection Initiation with a Particle Filter, データ同化ワークショップ, 2018年10月
Kawabata, T., and G. Ueno, A storm-scale particle filter for investigating predictability of convection initiation and development, Workshop on Sensitivity Analysis and Data Assimilation in Meteorology and Oceanography, Jul. 2018
Kawabata, T., and G. Ueno, Development of a storm-scale particle filter for investigating predictability of convection initiation and development, Japan Geoscience Union Meeting 2018, May 2018

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

なし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所