平成212009)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

21−共研−4104

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

GPSデータロガーを用いた海鳥の飛翔・採餌行動の空間スケールと行動モデリング

重点テーマ

フィールド生態学と統計数理

フリガナ

代表者氏名

ヨダケン

依田憲

ローマ字

Ken Yoda

所属機関

名古屋大学

所属部局

環境学研究科都市環境学専攻

職  名

准教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

海洋の高次捕食動物の行動は、海洋の生物生産力と相互作用しながら、極めて動的に様々な時間・空間スケールで変化する。したがって、海洋環境の変化に対する捕食動物の行動的対応や意志決定を理解するためには、ミクロからマクロレベルでの行動記録およびデータ解析が必要である。20年ほど前から、動物装着型のトラッキングシステムの利用により、動物の移動位置の記録が可能になってきた。特に、VHF発信器やアルゴス衛星システムを用いた動物の行動追跡はよく使用されている。しかしながら、これらの機器は高速サンプリングで動物を定位することができない上に、測定誤差も大きいことが欠点となっており、多様な時間・空間スケールの解析には向かない。近年、これらの機器に代わるトラッキングシステムとして期待されているのが、GPSデータロガーである。GPSデータロガーは、GPSシステムを使用することによって、ほとんど測定誤差無く、数秒に一回の高速サンプリングで動物の位置をロギングすることができる。本研究では、GPSデータロガーを用いることによって、繁殖期の海鳥または幼鳥の索餌・採餌行動を記録し、様々な時間・空間スケールで意志決定の解析を行った。8-10月にかけて、岩手県船越大島と新潟県粟島、長崎県男女群島、沖縄県仲ノ神島において、オオミズナギドリの成鳥の生態調査を行った。船越大島と粟島で繁殖する個体群は、採餌域として北海道沿岸を共有していたが、粟島の雌のみ繁殖地周辺で採餌をおこなっていた。オオミズナギドリは雌雄で体サイズに差があるが、船越大島の個体群では採餌域の雌雄差が見られなかったことから、環境要因(採餌場所までの距離など)も行動の性差に影響を与えていると考えられた。また、沖縄県仲ノ神島では、繁殖期後半のオオミズナギドリにジオロケータ(光量計)を装着した。来年度回収することによって、本種の越冬海域が判明することが期待できる。また、初めて調査を行った男女群島では、オオミズナギドリの繁殖コロニーの特定に成功した。来年度以降、GPSデータロガー等の装着によって、南方のオオミズナギドリの採餌域、採餌行動が明らかにできる準備が整ったと言える。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・論文発表
高橋晃周 & 依田憲、バイオロギングによる鳥類研究(総説)、日本鳥学会誌59, 3-19 (2010)

・ 国内学会発表
■風の流れとオオミズナギドリの移動. 山口まどか, 綿貫豊, 山本麻希, 依田憲. 第57回日本生態学会. 2010年3月, 東京.
■飛ぶ鳥が飛び立つ時?角度解析. 島谷健一郎, 依田憲, 佐藤克文, 塩見こずえ, 清水邦夫. 第57回日本生態学会. 2010年3月, 東京.
■バイオロギングによる鳥類研究:概説. 依田憲. 日本鳥学会2009年大会. 2009年9月, 函館
■オオミズナギドリの移動生態学. 依田憲, 山本誉士. 日本鳥学会2009年大会. 2009年9月, 函館

・ホームページでの成果の公表
http://web.mac.com/yoda_ken/

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

・ 時系列データ研究会. 2009年11月13日、名古屋、5人(島谷、依田ほか)
・ 海鳥研究会. 2010年3月22日、東京、20人(依田、山口、島谷ほか)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

島谷 健一郎

統計数理研究所

山口 まどか

名古屋大学大学院環境学研究科