平成91997)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

9−共研−67

専門分類

7

研究課題名

カイコの繭型発現に関する統計遺伝学的研究

フリガナ

代表者氏名

ナカダ トオル

中田 徹

ローマ字

所属機関

 

所属部局

職  名

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

カイコは中国で飼育が始まり、ここから世界各国に広がって、多くの地域品種が形成されたものと考えられている。申請者はこの品種分化のメルクマールとして、繭型に着目して、楕円形、紡錘形、くびれのある俵形などの特徴の数理的解析を進めており、生物進化のプロセスを探索している。そこで、世界各国のカイコの品種特性を調査して、その遺伝的分化と品種形成を明らかにするのが本研究の目的である。


カイコは、中国で野生種から飼育馴化が始まり、以降養蚕業として世界に広まったものと考えられている。
しかしながら、その起源となった昆虫や、その地域品種の成立にかかわる遺伝的分化に関する考察はまだ十分ではなく、いろいろな意見がある。
著者は、カイコ幼虫の作る繭の形が品種により異なることに注目して、その統計遺伝学的考察を行っている。すなわち、カイコの繭の形は、品種により楕円形、俵形、円形、紡錘形などに複雑に分岐しており、また雌雄間にも微妙な差がみられる。
これらの品種間交雑後代の観察を行うと、ある種のマーカー遺伝子によって繭型の表現が支配されることが確認された。従来この種の研究が行われなかったのは、繭型の測定が困難であり、正確に多くのデータを得ることが難しいところにあった。
近年、著者はパソコンとCCDカメラを組み合わせた画像処理システムを開発して、繭の長径、短径、断面積、体積等の数値を容易に計測することに成功した。
そこで、これらの繭型変数を組み合わせて多変量解析を行い、主として判別分析、クラスター分析、主成分分析等によって、雌雄や品種間にみられる繭型の微妙な差を数値化して、遺伝学的考察を続行中であり、本課題に関連する多くの知見を得ることができた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

中田 徹 カイコの繭型計測とその遺伝分析について 東北蚕糸研究報告 第22号 1997年12月
中田 徹 カイコの繭型の遺伝的分化に関する統計分析 北海道大学農学部邦文紀要 第21巻 1号 1998年 3月
P. R. M. Rao and T. Nakada Clustering of polyvoltine breeds of silkworm, Bombyx mori by image processing method: Significance of cocoon shape weight variables J. Indian Sericulture vol. 38 (in press) 1998. 4

中田 徹・ P. R. M. Rao  カイコの繭型発現に関する多変量解析と遺伝分析への応用 日本蚕糸学会第67回学術講演会講演要旨集 1997年 4月 3日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

近年、申請者は本邦をはじめ、アジアの温熱帯地域を中心として、世界各地域のカイコの品種について遺伝学的分析を続行中であるが、品種分化の特徴を示す形質の一つとして繭型に注目している。一般に形態的特徴の計測は相当の労力を要するため、データの収集が困難であるが、申請者は簡易画像解析システムの開発に成功したので、これにより容易に繭型計測が可能となった。現在、品種間や雌雄間の繭型発現の差に関する検討を行ったので、さらに繭型の異なる品種間の交雑実験を行って後代分析を続行中である。これらの形質の遺伝分析には、多変量解析や各種の統計分析の手法を導入することが必須であり、統計学分野の専門家との共同研究が要請される。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

村上 征勝

統計数理研究所