平成292017)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

29−共研−1006

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

7

研究課題名

高頻度資産リターンにおけるジャンプとボラティリティの分析

フリガナ

代表者氏名

ヨシダ ヤスシ

吉田 靖

ローマ字

Yoshida Yasushi

所属機関

東京経済大学

所属部局

経営学部

職  名

教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的
 金融・証券市場は、単に流動性を提供する場としてだけではなく、価格の発見機能を通じて、効率的な資源配分に寄与して経済の厚生を向上させ、また、金融センターの中心となる社会的インフラでもあり、国全体の競争力向上にとっても重要な存在である。これらの市場を構成する取引所に対する近年の投資家のニーズは、高度化・複雑化が著しく、取引システムの安定性、高速性、取引時間の延長から、決済制度、法的な規制の改善まで多岐に亘っている。
 このような背景で各取引所では、取引システムの機能改善、取引時間の延長などの対策を実施している。当然のことながら、投資家の関心は現物株式のみならず、ETF(Exchange Traded Funds)や株価指数のデリバティブ、債券を対象としたデリバティブも含まれていいる。
 特に、近年では日本銀行が金融政策の手段として、国債やETF、JREIT(日本版不動産投資信託)を購入することもあり、市場の流動性が懸念される場合もあり、これらのマーケット・マイクロストラクチャーに関する研究は喫緊かつ重要な課題となっている。
さらにETF市場を分析する意義としては、東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価という日本の代表的なマーケットポートフォリオを共通に参照している投資信託が複数あり、そのなかでも、価格水準の違いから呼び値が異なる銘柄も存在するという非常に興味深い銘柄が同時に取引されているので、呼び値の違いが流動性に与える分析をするのに適していることがある。
 したがって本研究ではこれらの価格変動過程に対して、実現バイパワー・バリエーションや切断実現ボラティリティなどを計測することにより、ジャンプやマーケット・マイクロストラクチャー・ノイズなどの発生状況を分析し、マーケット・マイクロストラクチャーと価格変動との関係を実証分析することを目的とする。

成果(経過)
2017年度は主としてETFに関するデータベースの構築および基礎的な分析を行った。特に2010年からの日経平均連動および東証株価指数連動型のETFに関する売買スプレッドのデータベースの構築および基礎的な分析を行った。
また、金先物に関しては、日本と中国の取引制度の相違についてまとめた。
さらに東京商品取引所に上場されている原油などの先物価格は、輸入価格などに対して、先行性があるかどうかをMIxed DAta Sampling(MIDAS)回帰モデルにより、検証した。MIDAS回帰モデルは、例えば被説明変数に月次の系列、説明変数に月の上中下旬毎の系列など期種の異なるデータを用いた回帰分析を可能にする手法である。分析の結果、原油先物価格の先行性が示され、先物の、ヘッジ手段としての有用性、企業の財務情報や物価動向の予測に対する貢献を示唆するものとなった。今後は北海ブレントを用いた場合や、外挿による検証を行う必要がある。
このMIDASにより高頻度データを利用したボラティリティの予測等も手法としては可能であることが確認できた。



 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【論文発表】
吉田 靖(単著)、原油先物価格による東日本大震災以降の電力会社の費用変動分析
東京経大学会誌 (298) 89-99、 2018年2月

吉田 靖(単著)、切断実現ボラティリティの推定と観測時間間隔: 日本株式による実証分析 (特集 高頻度金融データに基づく統計的推測とモデリング)、統計数理 65(1)、 141-154、2017年6月

【学会発表】
東京商品取引所先物価格の先行性
日本リアルオプション学会第1回コモディティ・ファイナンス研究部会 2018年3月19日

高頻度非財務情報による東日本大震災以降の主要電力会社の利益変動予測
日本リアルオプション学会2017年研究発表大会 2017年11月26日

切断実現ボラティリティの推定と観測時間間隔-日本株式による実証分析-
第34回応用経済時系列研究報告会 2017年11月18日

金投資とリスク軽減
日本FP学会第18回大会 2017年9月16日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催無し。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川崎 能典

統計数理研究所