平成232011)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

23−共研−1017

分野分類

統計数理研究所内分野分類

h

主要研究分野分類

2

研究課題名

神経スパイク発火の揺らぎを利用した情報処理の原理と応用

フリガナ

代表者氏名

コヤマ シンスケ

小山 慎介

ローマ字

Koyama Shinsuke

所属機関

統計数理研究所

所属部局

数理・推論研究系

職  名

助教

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

神経スパイク発火の揺らぎが脳神経データ解析の分野で着目されている.本研究では,揺らぎの神経情報処理への役割を調べ,その数理的基礎と工学的応用の基盤を確立することを目標とする.

この目的のため、神経コーディングの観点から以下のふたつの研究を行った。

神経コーディングとは,外界の情報や行動が脳神経系の活動にどのように表現されているかを問う分野である.刺激と神経活動の関係は,符号化(エンコーディング)と復号化(デコーディング)というふたつのアプローチから接近できる.符号化とは,多様な外界刺激がどのような神経活動パターンに変換されるかを問い,主な関心は,神経活動を刺激の関数としてできるだけ精密に表すことである.復号化は,その逆向きの関係,すなわち与えられた神経活動からそれを引き起こした刺激を求めることである.これらふたつのアプローチは密接に関係しているが,符号化の観点から定義された神経コードと,復号化の観点から定義されたそれとは,一般には異なりうる.本研究では,まずこれらふたつのアプローチをレートコーディングとテンポラル(揺らぎを用いた)コーディングの観点から考察し,「符号化の観点から神経コードが定義された場合,テンポラルデコーディングは必ずしもテンポラルコードを復号化するだけでなく,ある種のレートコードを,レートデコーダーよりも効率よく復号化することができる」,という結論を得た[1,3,4,5,6].

神経スパイク発火信号の発生は一般に不規則で揺らぎを伴い,観測されたスパイク時系列から発火率変動を推定することは容易ではないが,スパイク発火の非ポアソン性を適切にモデル化することで,変動を緻密にとらえることができる.本研究では,非ポアソン性を考慮に入れた経験ベイズ推定を経路積分法を用いて解析し,推定可能な最小の発火率変動がスパイク間隔の変動係数Cvにスケールされることを示した[2,7,8].

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(論文、プレプリント)
[1]Koyama,S.(2012)On the relation between  encoding and decoding of neuronal spikes. Neural Computation,In press.

[2]Koyama,S.,Omi,T.,Kass,R.E.and Shinomoto,S.(2012)Information transmission using non?Poisson regular firing.(preprint)


(学会発表)
[3]koyama,S.(2011)On the relation between encoding and decoding  ofneuronal spikes.Twentieth Annual Computational Neuroscience Meeting.

[4]小山慎介(2011)神経情報の符号化と復号化の関係について.日本物理学会2011年秋季大会.

[5]小山慎介(2011)Temporal decoders not only enhance the reading of temporal codes,but also rate codes.日本神経回路学会第21回全国大会.

[6]小山慎介(2012)On the relation between encoding and decoding  ofneuronal spikes.脳と心のメカニズム第12回冬のワークショップ.

[7]小山慎介(2012)神経スパイク発火の非ポアソン性を用いた情報伝達.京都基礎物理学研究所研究会「情報統計力学の最前線?情報と揺らぎの制御の物理学を目指して?」.

[8]小山慎介,近江崇宏,篠本滋(2012)スパイク発火の非ポアソン性を用いた情報伝達について.日本物理学会2012年春期大会.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

篠本 滋

京都大学