平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−12

専門分類

1

研究課題名

無限次元空間上の統計学の研究

フリガナ

代表者氏名

ヨシダ ナカヒロ

吉田 朋広

ローマ字

所属機関

東京大学

所属部局

大学院数理科学研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

確率過程から誘導される無限次元空間上の統計的実験の族に対する統計的推測の漸近理論を研究することを目的とする。また、その経済学などへの応用を研究する。


工学、経済学、生物学等に多くの応用のある時系列モデル、拡散過程、点過程などの統計推測の理論を、数学的に研究した。確率過程の統計モデルから誘導される統計的実験は無限次元空間上の確率分布族になるため、これにたいする統計推測は無限次元空間上の統計学と呼べるが、この理論の展開のためにはいろいろの新しい確率論の結果が必要になる。これらの結果を整理し、未知パラメータの推定などを研究した。具体的には以下に述べるテーマで研究した。
(1)非線形時系列モデルの研究は線形のときと異なり、モデルの構成の段階から様々な可能性と任意性があるが、この一つとして最近バイリニアモデルが注目されている。バイリニアモデルに対して、モーメント法によって未知パラメータの推定量の漸近挙動の研究を行った。この種の非線形モデルに対してモーメントの存在を示すことは、線形モデルの場合と比べ、はるかに困難なことである。また数学的にも未知な問題を含んでいる。
(2)無限次元空間上の解析学としてのマリアヴァン解析が近年盛んに研究されているが、この理論のイントロダクションと応用を共同研究レポートとしてまとめた。統計学にこの理論が導入されたのは4年前のことで、また確率論の先端的分野であるため、統計学者にはほとんど馴染みがないのが現状であるが、そのギャップを埋めるのに役立つようまとめられた。また、後半では、尺度混合型分布の漸近展開のこれまでの結果の一般化に我々の手法が効果的に働くことを示した。これは伝統的なスタイン型の縮小推定量の分布の近似に一つの解答を与えている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Asymptotic expansion of Bayes estimators for small diffusions. Probability Theory and Related Fields. 95,1993

Asymptotic expansions for perturbed systems on Wiener space, 日本統計学会,7月 吉田朋広

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

経済学、工学などで応用のある拡散過程、点過程といったセミマルチンゲールの確率的構造が明らかにされつつあるが、それらに対する統計推測の理論は、その重要性にもかかわらず、多くの問題が未解決のままである。
確率過程に対する統計理論を展開するとき、自然に無限次元空間上の分布族が現れるが、この統計的実験の族の漸近挙動の解析のために、マルチンゲール収束定理、混合型マルチンゲール中心極限定理などの極限定理の研究とそれらの応用を行う。また、長期記憶モデルなど最近確率論でも注目されている時系列モデルの解析の基礎となる理論の研究を行う。経済学への応用も研究する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

飯野 正幸

東北大学

尾形 良彦

統計数理研究所

阪本 雄二

名古屋大学

茂野 洋志

     

竹内 惠行

大阪大学

矢島 美寛

東京大学